太古の超巨大サメ「メガロドン」の謎に迫る 日本出身の研究者「Dr. Shimada」
科学的検証によるサイズ推定
今回の研究においてDr. Shimadaはホオジロザメの歯と体の大きさの相関関係をもとに、メガロドンのサイズを推定している。 正式に学術論文として発表し、他の研究者から信頼を得るには、実に様々な工夫や知恵を絞る必要がある。 Dr. Shimadaは他のサメでなくホオジロザメを選んだ理由として、捕食を行う現生の獰猛なサメの中で「一番大きい種」という点、そして「歯の形態」がメガロドンのものと比較的似ている点をあげている。 メガロドンの歯はかなり平らな板状で、その両ふちにはステーキナイフのような多数の細かな「ギザギザ」がある。そして同じようなギザギザはホオジロザメにもある。おそらく両者は同じように獲物にアプローチし、同じような仕草で口や歯を使って獲物を噛みちぎっていたのだろう。そのためサイズの比較・推測を行う際に、ホオジロザメのデータを用いることは論理的に実に的を射ているといえる。 もう一つDr. Shimadaが目を付けた重要な点として、口の中におけるそれぞれの歯の大きさのバリエーション(差異)があげられる。 ホオジロザメ等の口の中を細かく観察してみると、場所によって歯のサイズと形がやや異なる。一番大きな歯は決まって上あごの先端部(=中央部)に位置する左右二つの前歯になるそうだ。横幅は上あごの歯のほうがより平らでそして大きく見栄えがするが、長さ(=歯の高さ)自体はそれほど変わらないそうだ(しかしわずかながら差異があるので、メガロドンの歯を調べる時には注意が必要となる)。 たくさんのホオジロザメの幼体から成体までのデータをグラフにまとめた結果、歯の大きさで体長を推測することが理論上可能となる。この「ホオジロザメのグラフ」をもとに、メガロドンの体長に迫ることができる。 Dr. Shimadaは多数の博物館の化石標本収納施設を訪れては、メガロドンの特に上あごの前歯と思われる標本の計測を行った。何百個というメガロドンの歯の化石標本を調査したそうだが、一番大きなものをシカゴのフィールド自然史博物館において確認したそうだ(Dr. Shimadaの論文内の図1にこの化石標本のきれいな写真がみられる)。 この一番大きなメガロドンの歯の高さは162ミリ、エナメル質の部分のサイズは117ミリになる。 メガロドンのデータをホオジロザメのグラフに照らし合わせてみた結果、この一番大きなシカゴ標本の体の大きさは、最大限に見積もって「15.3メートル」になった。 これまでに漠然と、おそらく希望的推測によって出された数字と比べると「かなり小さい」というイメージを持つ人がいるかもしれない。しかし私が個人的に持つイメージは、15.3メートルでも十分に「とてつもなく巨大」だ。 四階建てのビルの高さに匹敵するほどの筋肉質な影が、海の中で音も立てずにこちらにかなりの速さで遊泳してくる。その口の中には想像を絶するほど鋭くて大きいギロチン刃のような歯が多数並んでいる。 もしタイムマシンがあったとしても、中新世の海に行くことだけは絶対に避けたほうが賢明だろう。