【解説】年金水準30年後“2割減”に悲鳴…5年に1度の年金検証 年金が実質“目減り”…夫婦で18万円減少か
厚生労働省は3日、5年に一度行われる将来の年金支給額の試算結果を公表した。 それによると、33年後の2057年度、年金支給額の水準が現在と比べ、約2割も減ることが明らかになった。 【画像】夫が会社員、妻が専業主婦の場合の夫婦2人がもらえる年金受給額の試算 現役世代の平均手取り収入が増加する一方で、所得代替率が下がっていて、現時点で65歳の人の年金受給額は月22万6000円だが、今後、世代別に少しずつ減少していくという。
年金受給額が約2割低下か
年金の受給額の試算について、フジテレビ・智田裕一解説副委員長がくわしく解説する。 青井 実 キャスター: ーー自分が、具体的に年金がどれだけもらえるか気になりますよね? 宮司 愛海 キャスター: 夫が会社員、妻が専業主婦の場合の夫婦2人がもらえる年金受給額の試算を見ていきます。 前提としては、年ごとの現役世代の手取りの収入をもとに試算されています。 青井 キャスター: ーー賃金は、37万円から47.8万円に上がっていますね? 宮司 キャスター: そうなんです。今回の財政検証では、経済が成長するケースや全然成長しないケースなど、さまざまな試算が発表されました。 今回紹介するのは、ここ30年の経済成長がそのまま続いた場合の試算のため、手取りは経済成長に合わせて伸びていっているというケースです。 その前提をもとに、世代別の年金受給額を見ていきます。 現在、65歳の方が2024年度に支給開始した場合、現役世代の平均手取り額37万円に対して、月22万6000円が支給されます。 現在60歳の方が65歳の時にもらえるのは22万3000円、50歳は21万7000円と少しずつもらえる額は減っていきますが、そこまで多く減ってはいないように見えます。 青井 キャスター: ーーしかし、約2割低下するんですよね? 宮司 キャスター: そうなんです。2割減ったというのは、「所得代替率」のことです。 これは年金世代の受給額が、現役世代の手取り額と比べて、どのくらいの割合になるかを示す数字です。 現在の65歳は、平均賃金に対して61.2%ですが、30年後、現在30歳の人が65歳を迎えるころには、2割減の50.4%に減っているんです。 スペシャルキャスター パックン: これはひどい話で、平均収入は上がるというのは、その分だけ平均の生活費、物価上昇によって生活するのにかかるお金も上がってくるはずです。 国によって計算式が違うんですけど、貧困線というものがあって、平均収入の半額ぐらいが貧困線とよくいわれます。 年金暮らしが、“事実上の貧困”と計算式でなってるんですよ。 青井 キャスター: ーー2024年現在の平均の手取り額が、37万円と結構多いという印象ですが、この数字はどういうことですか? 智田 祐一 解説副委員長: これは、高所得者を含めた全体の平均で、男性に限ったもので、さらにボーナスも込みのため、高い数字になっています。 青井 キャスター: ーー手取りは増えているのに所得代替率は下がっていますが、これはなぜですか? 智田 解説副委員長: 手取りは、経済が成長して、賃金が伸びていくのに合わせて増えていきます。一方、所得代替率は、その手取りに対してもらえる年金額の水準がどのくらいになるかを示したものですから、賃金は伸びても、それと同じくらい年金も上がっていかない状況だと、下がっていくわけです。 スペシャルキャスター パックン: よく見ると、今から40年後の給付額は、21万3000円とずっと変わらないですね。 智田 解説副委員長: 年金額自体は21万3000円が続きますが、現役世代の手取りの方は、賃金が上昇するのに従って上がっていっています。このため、手取りに対するもらえる年金の割合「所得代替率は」50.4%から、徐々に下がっていく計算になるので、実質目減りしているということです。 青井 キャスター: ーーこの財政検証は、5年に1度の年金の定期健康診断みたいなものということですが、5年前と今回を比べるとどうなんですか? 智田 解説副委員長: 5年前と比べると、良くなっています。前回の計算ですと、経済がうまくいかない場合、現役世代の手取りに対する年金水準が5割を切るケースもあったんですが、今回は、最悪の場合を除くと、5割は確保できていて、改善が見てとれる結果です。 背景には、女性や高齢者で働く人が増え、保険料収入が増えたことがあり、また年金の運用が株高の中、うまくいったことなど、そうしたことも改善に結びつきました。