日米合作 ブロードウェイミュージカル『RENT』オリジナル版演出家 マイケル・グライフ インタビュー到着!
――そもそも『RENT』との関わりは? 作詞・作曲・脚本を手がけたジョナサン(・ラーソン)とはちょっとだけ知り合いでした。そして、作品が最初に上演されたニューヨーク・シアター・ワークショップでは『RENT』より前にすでに演出を手がけていました。僕が演出した作品をジョナサンはすごいと思っていてくれたというのもありますし、この作品で描かれている物語を深刻に受け止め、そのテーマをより深く描き出す演出家を探していたんだと思います。『ビッグ・リバー』のカリフォルニア版とブロードウェイ版に僕は共同演出家として関わり、そしてツアー版に演出家として関わったわけですが、ストレートプレイに加えミュージカル演出の経験をジョナサンが重んじてくれたということもあります。最初に脚本を読み、ナンバーを聴いたとき、ジョナサンは、僕自身も知っているような若い人々を描く、本当にすばらしい作品を作り上げたと思った。1990年代前半当時、AIDSと共に生きる人々、AIDSで亡くなった人々を僕自身大勢知っています。だから、そんな人々、その生の闘いに対する贈り物のようなこの作品に、非常に心を動かされました。ジョナサンの手がけた音楽と歌詞もすばらしいと思った。だから、エキサイティングだなと感じて演出を引き受けたんです。 ――その当時、こういった物語は新しいものだったのでしょうか。 商業的成功を収めるようなミュージカルの題材としては珍しいものでした。けれども、1980年代後半~1990年前半にオフ・ブロードウェイで作り上げられていっていたストレートプレイやミュージカルとしては珍しいとまではいかなかったと思います。なぜなら、そのころ、AIDSは演劇界にも蔓延していたからです。 ――『RENT』の成功の要因はどこにあるとお考えですか。 その時代の闇と悲劇に根差す物語、我々自身の子供時代や子供たちを思い出させるような好感のもてるようなキャラクターが登場すること、そして、例えば『ウエスト・サイド・ストーリー』のようにシリアスな題材を扱ったミュージカルを思い出させるところにあると思います。『ウエスト・サイド・ストーリー』や多くのオペラは実際にシリアスでダークな題材を扱っていますし、と同時に観客の感情を満足させてくれるものでもありますよね。音楽ほど、そうやって感情に働きかけることのできるものはない。その意味で、『RENT』はオペラの伝統にある作品だと思います。もちろん、何だかときに忘れがちではあるのですが、プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』に多くを負うところのある作品なんですが。すばらしいオペラ作品とミュージカル作品両方の系譜にある作品だと思います。 ――『RENT』というタイトル自体、『ラ・ボエーム』からいろいろ“借用した(rent)”といった意味もあるのかなと思っていました。 タイトルには多くの意味が含まれていると思います。“分裂、不和(rent)”にある登場人物たちをまた一つにできるのかという意味合いもありますし、『ラ・ボエーム』の登場人物たちにも「家賃(rent)」が払えないという共通点がありますよね。