プラダの建築と呼応する不思議な映像世界──アーティスト、リジー・フィッチとライアン・トレカーティンにインタビュー
映像や彫刻を組み合わせた没入型で、劇場的とも言えるインスタレーションを生み出すリジー・フィッチとライアン・トレカーティン。プラダ 青山店での個展開催のために来日した2人にインタビューを敢行した。 【写真を見る】映像や彫刻を組み合わせた没入型で、劇場的とも言えるインスタレーションを生み出すリジー・フィッチとライアン・トレカーティン。プラダ 青山店での個展開催のために来日した2人にインタビューを敢行した。
プラダ 青山店で公開されているアーティストデュオ、リジー・フィッチとライアン・トレカーティンの作品《It Waives Back》。2つの映像と彫刻群で構成されるインスタレーションは、作品制作のはじまりが面白い。遡ること2016年、ふたりはまず米国オハイオ州に広大な土地を購入し、自宅と映画用のセットを建てた。流れるプールがある遊園地風の巨大なセットだ。 ライアンは言う。「ふたりともオハイオ出身。出会ったのは大学時代ですが、幼い頃ともに地元の同じ遊園地によく行っていたんです。その共通の経験が私たちの最初の絆」。またリジーも「知り合った頃もよく遊園地を作りたいと話していましたね。遊園地自体、コンセプチュアルでどこかアート的ですから」 そこで撮影された作品は、2019年、ミラノのプラダ財団で発表され、大きな話題を集めた。今回の作品は、当時撮影した映像素材を改めて見直して生まれたもの。こうして過去の素材を使い、作品を新たにするのもふたりの手法だ。 ライアンいわく「オハイオに移住したのは、トランプが大統領になる前の政治的な緊張感があった頃。それもあって映像では土地を所有することやそこで起こる対立を主題にしましたが、時が経ち、映像を見直しながら新たに思うことが多々あったのです」 また、当時と比べて表現技術も飛躍した。今ではAIモデルを使い、新たなセリフを人物に言わせたり、他人が自分の身体を乗っ取るような表現も簡単にできる。今回はそうした最新技術も駆使している。 加えて、本作ではプラダ 青山店の建築からも大きな影響を受けた、とリジーは語る。「アイデンティティのあり方も本作の重要な主題。映画ではそのアイデンティティを、絶えず変化しひとつのものに定まらないものとして描いています。それは、まさにゲージのようで内側と外側が曖昧にも見えるこの建物から得たビジョンなのです」 『LIZZIE FITCH / RYAN TRECARTIN: IT WAIVES BACK』 開催期間:~2025年1月13日(月) 開催場所:プラダ 青山店 東京都港区南青山5-2-6 6F 開催時間:11:00~20:00 入場料:無料
文・松本雅延 編集・橋田真木(GQ)