Intelの苦境と変わりゆくデバイス――“AIシフト”の影響を受け続けた2024年のテック業界
XR市場をめぐる攻防は「先行き不透明」
2024年にAIと並んで注目を集めたのが、XR市場だ。日本語で「拡張現実」とも訳されるXRは、「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(混合現実」の総称で、Appleが「Apple Vision Pro」を投入したことをきっかけに、競合企業も含めて市場の動きが活発になっている。 Meta(旧Facebook)は、VR/MRヘッドセット「Meta Questシリーズ」で低価格帯から高性能モデルまで取りそろえ、ゲームを始めとする個人ユースだけでなく、ビジネス/教育ユースを視野に入れた機能拡充をすることで、幅広い領域を狙っている。ソフトウェアプラットフォーム「Horizon OS」もオープン化を進め、他社の参入を促す構えだ。 クリスマス商戦の結果が出る頃には、米国で299ドル(日本では4万8340円)からと低価格になった「Meta Quest 3S」の結果も出ていることだろう。米国価格は「Nintendo Switch」と同じであり、若年層向けのクリスマスプレゼントとして、北米ではかなり大きな注目を浴びていた。 XRデバイス回りでは、2024年にようやく発売されたApple Vision Proという“超ハイエンド機”も話題を集めた。2月に米国で発売され、日本でも6月28日から購入できるようになった。 ただし、日本でも59万9800円からという高い価格もあって、世界における販売台数は30万台未満ではないかと言われている。使っているハードウェアがリッチなこともあって、技術の先進性は確かにあるので、現在はクリエイターの想像力を歓喜し、一部のデベロッパーに基本となるツールセットを提供することが狙いのデバイスという位置付けと考えるとよいだろう。 中国からも、TikTokの開発元として知られるByteDance(字節跳動)の子会社であるPICOがハイエンドVR/MRヘッドセット「PICO 4 Ultra」をリリースした。日本でも9月20日に発売され、8万9800円から購入可能だ。 PICO 4 Ultraを含むPICO 4シリーズは、中国市場を中心に展開を図る予定だった。しかし、習近平政権が政策としてゲーム機の利用制限を実施したため、個人向けエンタテインメント機としては、現状において中国国内での普及の芽を絶たれた形となる。 実際に使ってみると、PICO 4 Ultraの製品としての実力は高い。しかし、展開力については期待しにくい状況だ。 XR分野の製品は、半導体からOS/アプリ/サービス/AIなどさまざまなジャンルの技術の融合体ともいえる。そのため、多様な業界とのリレーションシップの構築が極めて重要となる。 その全てを内製しているAppleは異例中の異例の存在だが、その“対抗馬”としてSamsung Electronics(サムスン電子)、Google、Qualcommの3社が共同開発した「Android XR」対応AR/VRヘッドセットが2023年後半に発表するはずだったのだが、結局この12月になってようやく「Project Moohan(仮称)」として2025年に発売すると発表された。 うわさレベルの話だが、Project Moohanは開発計画が大幅に遅れたのだという。発売は早くて2025年の春、遅くとも夏ぐらいには発売を迎えるのではないかと言われている。 この技術の基本となるAndroid XR(OSのビルディングブロック)のライセンスによって作られる他メーカーの製品、例えばソニーが開発を進めている新しいヘッドマウントディスプレイなどは、Project Moohanの後の発売になるだろう。 Metaも次世代Questの開発を進めているそうだが、製品化にはしばらく時間が掛かる。価格面と実用面を考えると、当面はXR分野におけるMetaの“ソロプレイ”が続きそうだ。