「チョコは体にいい」は本当か、“カカオ分”は当てにならず、健康的なチョコの見分け方は
「健康的なのは『チョコレート』ではなく、何が含まれているかが重要」と科学者
古代マヤ人は、通貨に使うほどカカオ豆が大好きだった。また、カカオは健康に良いと信じていた。今でも、カカオ豆から作られたチョコレートは健康に良いと、多くの人が考えている。 「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 実際、カカオにはポリフェノールの一種であるフラバノールなど、健康的とされる植物由来の成分が豊富に含まれている。 「カカオ豆の生物活性成分について調べた研究のほとんどが、フラバノールを摂取すればするほど血圧やコレステロール値など心臓病の発症に関連するメカニズムに良い影響が与えられることを示しています」と話すのは、米ハーバード大学T・H・チャン公衆衛生大学院とブリガム・アンド・ウィメンズ病院に所属する疫学者のハワード・セッソ氏だ。 心臓の健康状態や脳の機能を改善する可能性があることは確かだが、しかし、残念ながらチョコレートをたくさん食べれば健康にいいという科学的根拠はない。その理由から、より健康にいいチョコレートの見分け方までを解説しよう。
どんな効果が報告されているのか
チョコレート人気のおかげで、カカオに含まれる天然の化学物質が人間の健康にどのような効果を与えるのかを調べた研究は多い。28グラム以下のダークチョコレートで心臓の健康が改善されるというレビュー論文もあるが、取り上げた研究のほとんどが、実際にチョコレートを食べたわけではなく、成分について調べただけだった。 2022年に、セッソ氏のチームはフラバノールの効果を示す説得力のある研究結果を発表した。約2万1000人の成人を対象にした臨床試験で、1日500ミリグラムのカカオフラバノールをサプリメントで摂取した人は、プラセボを摂取した対照群と比較して心疾患による死亡リスクが27%低かったという。この研究は、2022年3月に医学誌「The American Journal of Clinical Nutrition」に発表された(研究は独立したものだが、菓子メーカーの研究部門であるマーズ・エッジが一部資金を提供した)。 ほかにも、フラバノールにはインスリン感受性を高める可能性があるというレビュー論文が、2016年に学術誌「Molecular Nutrition & Food Research」に発表されていた。インスリンの感受性が上がれば、2型糖尿病の発症リスクが低下する。とはいえ、先に述べたセッソ氏のより厳密なランダム化臨床試験のデータを分析したところ、2型糖尿病のリスクを下げる効果はなかったと2023年10月に医学誌「Diabetes Care」に発表されている。 2020年11月に「Scientific Reports」に発表された論文によると、カカオに含まれるフラバノール(果物や野菜、お茶にも含まれている)は大脳皮質への血流を改善させることによって加齢による認知機能の衰えを遅らせたり、脳の働きを向上させたりするかもしれないという。それでも、実際の健康上の効果を理解するにはさらなる研究が必要だ。 いずれにしろ、こうした研究結果をそのままチョコレートに当てはめることはできない。研究の参加者は500ミリグラムのフラバノールを摂取するために、脂質や糖分が多く含まれたチョコレートバーを一日に何個も食べなければならなくなってしまう。また、一口にチョコレートといっても製造の過程や成分は様々であり、製品によって大きな差がある。