【エイリアン:ロムルス】見どころは原点の恐怖とシリーズへのリスペクト
9月6日(金)、フェデ・アルバレス監督が新たに挑んだ「エイリアン」シリーズ最新作、『エイリアン:ロムルス』(以下『ロムルス』)が遂に日本公開された。海外で既に大ヒットを記録、日本のファンの期待も大いに高まった中でいよいよその全貌が明かされる。 【関連画像】『エイリアン:ロムルス』に登場するエイリアンの姿を見る!(8枚) 約7年ぶりの新作となる『ロムルス』は、『エイリアン』と『エイリアン2』の間の時間軸を舞台に描かれる物語だ。日が昇らない惑星でウェイランド・ユタニ社の過酷な労働に従事する若者たちが、放置された宇宙ステーション施設「ロムルス」の冷凍休眠装置を使って別の惑星へと移住する計画を立てる。元恋人に誘われたレイン(ケイリー・スピーニー)は、共に暮らすアンドロイド・アンディと共にこの企てに参加することに。しかし、ロムルスには彼らの想像を超える驚愕の事態が待ち構えていた――。 シリーズの幕開けを告げたリドリー・スコット監督作『エイリアン』(79年)は、宇宙船という閉鎖空間を舞台に正体不明の異星生物に襲われる恐怖を描いた良質なSFホラーであり、今なお様々なシーンに影響を与え続けている。 続くジェームス・キャメロン監督の『エイリアン2』(86年)からは1作目で生き残ったノストロモ号の二級航海士リプリー(シガニー・ウィーバー)を中心としたドラマへとシフトし『エイリアン3』(デビッド・フィンチャー監督/92年)『エイリアン4』(ジャン=ピエール・ジュネ監督/97年)で、彼女の足取りを追いかけることとなる。 そして21世紀に入ってからは、再びリドリー・スコット自身が手がけたシリーズのプリクエル的な位置に立つ『プロメテウス』(12年)、『エイリアン:コヴェナント』(17年)によって、エイリアン誕生の秘密が描かれた。 ファンそれぞれの意見があるだろうが、個人的にはシリーズが重なるにつれてエイリアンの魅力が目減りしていった印象がある。 『2』以降はさながらゲームの標的のような「駆除対象」となり、『プロメテウス』ではエイリアンの出自が明らかにされたことでその神秘性は薄れ、さらに『コヴェナント』ではアンドロイドが中心となってドラマを牽引する逆転現象まで起きてしまった。 『ロムルス』はその迷走を抜け出し、原点である1作目の立脚点「SFアクション・スリラー」へと帰還を果たした。まず若者グループが災厄に巻き込まれるという物語の骨子がスラッシャー映画の基本スタイルであり、徹底的に追い詰められるレインたちの絶望とエイリアンの容赦ない凶暴さが大きな牽引力となっている。 エイリアン成体(ビッグチャップ)以上にその存在感をアピールするのは、八本脚と長い尻尾が特徴的な生物「フェイスハガー」だ。顔に飛びつき宿主の体内にエイリアン幼体を流し込むという忌むべき存在が、本作ではこれが群れで登場して恐るべきスピードで襲いかかって来る。これまでは成体登場までの露払い的な扱いであったが、まったく新たな脅威として観客を脅しにかかってくる。 そしてレインたちを襲う危機はエイリアンだけではない。思わぬ事故の勃発から、ロムルスはその軌道を外れて隕石群へと接近し始めるのだ。一刻も早くロムルスを脱出しなければならないタイムサスペンスも加わり、観客の動悸はさらに激しくなるはずだ。 また、本作はこれまでのシリーズを楽しんできたファンに対するサービスも忘れてはいない。シリーズを貫くウェイランド・ユタニ社やアンドロイドを巡るドラマは勿論のこと、各タイトルで印象的だったシチュエーションやアイテムを彷彿させるビジュアルが各所に散りばめられている。『ドント・ブリーズ』でも『悪魔のいけにえ』ほか名作ホラー映画への目配せをアピールする場面をインサートしてきたアルバレス監督だけに、ファンはその一つひとつにニヤリとさせられることだろう。 原点回帰にしてシリーズを俯瞰する『エイリアン:ロムルス』はシリーズ初心者を大いに震え上がらせると共に、ディープなファンも深く頷かせてくれるはずだ。残暑を吹き飛ばすとびきりの恐怖を、劇場ならではの大スクリーンと音響システムで是非体験してもらいたい。
伴 ジャクソン