ストラテジストは円一段安を警戒、日銀利上げは3月以降との見方浮上
(ブルームバーグ): 日本銀行による12月の利上げ見送り観測の高まりで円安が進む中、為替ストラテジストはさらなる円下落に警戒を強めている。金融市場では来年1月も日銀が利上げに踏み切れず、実施は3月以降との見方が浮上しているためだ。
日銀は利上げを急いでいないとブルームバーグが報じた11日夕の為替市場では、円が対ドルで151円台半ばから152円台後半まで1円以上下落した。市場の12月利上げの織り込みは既に大きく低下していたが、日銀の判断を変える材料に乏しいことを考えると、来年1月の利上げにも懐疑的な見方が広がる。
1月の利上げが難しいとされる背景の一つに、日銀の金融政策決定会合の数日前に行われるトランプ次期米大統領の就任式がある。就任と同時に、世界経済に与える影響が大きい関税引き上げが発表されるとみられている。
SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは「関税引き上げの影響を検証せずに利上げを判断することは難しい」と指摘。12月に見送った時点で当面は利上げをできなくなると予想する。
BofA証券の山田修輔主席FX・金利ストラテジストは、利上げが3月まで後ずれすると少し間が空くため、「円キャリー取引というテーマが出てくる可能性は十分ある」と述べ、ドル・円は155円や11月に付けた157円手前までの円安もあり得るとの見方を示す。
通貨オプション市場でドル・円の1カ月物リスクリバーサルを見ると、円を買う権利の需要が売る権利の需要より多いことを示すマイナス幅が縮小傾向にあり、日銀の利上げによる円高への警戒は後退している。
三井住友信託銀行米州部マーケットビジネスユニットの山本威調査役(ニューヨーク在勤)は、日銀の利上げが「12月になくても1月にはあるということが円安のストッパーにはなっている」と指摘。1月も見送られた場合、次の3月は「トランプ政権がスタートして相場が不安定化しているリスクがある」と懸念を示す。