なぜAppleは「環境に優しい」と連呼するのか…多くの日本人が気付いていない「世界のビジネスの新常識」
■なぜ日本から「チェンジメーカー」が出ないのか この調査からわかるのは、一部のチェンジメーカーはSXに取り組むことで、売上増大、生産性向上、社員エンゲージメント向上を実現していることである。 SXが事業成果に与える影響は、業種による違いがある。SXと事業成果を両立しやすい業種、両立しにくい業種があるということだ。 チェンジメーカーが各業種で占める割合を見ると、上位5業種は「資源・エネルギー」17%、「医療・ヘルスケア」13%、「銀行・金融」11%、「製造」11%、「流通・小売」11%となっている。 しかし業種の違いによる差は、国の違いによる差よりはるかに小さい。 国別にチェンジメーカーが占める割合を見ると、ドイツ24%、フィンランド23%、シンガポール17%、スペイン17%、米国12%となっている。最下位は、0%の日本とニュージーランドだ。 アンケート調査なので、国ごとのSXに対する意識や景気などが影響することも考えられる。ドイツやフィンランドでは「SXと事業成長は両立するのが当たり前」と考える経営者層が多く、日本の経営者層は謙遜して「両立していない」と答えたのかもしれない。 ただしアップル、テスラ、ボッシュなどの例を見ると、日本ではまだ際立ったチェンジメーカーが出ていないことも確かだ。これからサステナビリティと事業成長を両立する日本企業が出てくることを期待したい。 ---------- 田中 道昭(たなか・みちあき) 立教大学ビジネススクール教授、戦略コンサルタント 専門は企業・産業・技術・金融・経済・国際関係等の戦略分析。日米欧の金融機関にも長年勤務。主な著作に『GAFA×BATH』『2025年のデジタル資本主義』など。シカゴ大学MBA。テレビ東京WBSコメンテーター。テレビ朝日ワイドスクランブル月曜レギュラーコメンテーター。公正取引委員会独禁法懇話会メンバーなども兼務している。 ----------
立教大学ビジネススクール教授、戦略コンサルタント 田中 道昭 構成=伊田欣司