BYDの新型車「シール」に試乗- 中国産のEVセダンは侮れない!
ボディサイズは全長4,800mm、全幅1,875mm、全高1,460mm。実車を前にするとそれなりの存在感があるのだが、乗り込むとさほど大きなクルマだとは感じない。おそらく、サイズが同程度のセダンよりも視界が広く、車両感覚をつかみやすいことが影響しているのだろう。 極めて個人的な意見だが、せっかくフロントフェイスはカッコいいのにリアが好きじゃない、あるいは前後のデザインバランスが悪いというクルマが多い中で、久しぶりに前後の顔つきのバランスが取れた完成度の高いセダンを見た気がした。 インテリアはシンプルながら高級感があり、居心地がいい。何より際立っているのはシートの質感の良さだ。腰かけたときの柔らかさとほどよいホールド感は絶妙で、長時間の運転でも疲れにくいだろう。この価格帯(後述)にしては、かなりの出来栄えだ。
■カーブでも積極的にアクセルを踏みたくなる 走り始めると、動力がタイヤに伝わって徐々にタイヤが回りだす感触がしっかりと感じ取れた。EV特有の機械的な動きではない。ただ、アクセルを踏み込んでみると、明らかに内燃機関(エンジン)を積むクルマとは違う、強力な瞬発力が顔をのぞかせる。高速道路への合流や追い越しなど、加速が必要なシーンでも力不足を感じることはない。それどころか、スーパーカー並みといっても言い過ぎではないくらいだ。
さらに強調したいのが、ハンドルを切ったときの車体の安定感だ。特にワインディングでは、車体もドライバー自身も横に振られることがない。昔のフランス車でよくいわれた「猫足」のように、しっかりと路面をグリップしてくれる滑らかさは癖になる。 カーブでアクセルを踏み込んでも気持ちよく走れる。正直、ここまで思い通りに走れるとは思っていなかった。車内の静粛性はかなり高く、車外の雑音などはまったくといっていいほど聞こえてこない。シールは運転に没頭できるEVだ。
セダンながらシールの使い勝手は良好だ。フロントにある荷室は容量50Lとそれなりの広さだが、小さめのボストンバッグくらいなら入れられそう。リアのトランクにいたっては400Lもの大容量を確保しているので、大きめのキャリーケースでも2~3個は余裕で積めるだろうし、長尺の荷物も問題ないはずだ。 ■路面の振動は意外に拾う? 気になった点も挙げておこう。ひとつは、路面の振動を拾いやすいところだ。高速道路上で、路面のつなぎ目を越える際にはそれなりの振動を感じた。速度にもよるだろうが、体が上下に揺さぶられるのは気になった。 そしてもうひとつは、すべてのグレードで天井が2層構造の「パノラミックガラスルーフ」になっていること。開放感があるし、紫外線カット率は99%、可視光線透過率は4.2%、日射透過率は16%と運転に支障がない設計になっているのはいいのだが、できればシェードが欲しかった。日本の夏は年を追うごとに熱くなっているというのが実感だ。炎天下をガラスルーフのクルマで走っていれば、車内の温度上昇は避けられないのではという心配がある。