小池知事の掲げた「花粉症ゼロ」 木製ガードレールが促進するか?
鋼製から木製へ 林業活性化に期待
木材利用が奨励される中、木の使いどころとして注目されているのが「木製ガードレール」です。道路は日本全国に行き渡っており、多くの区間でガードレールが必要になります。 一般的なガードレールは鋼製ですが、これらを木製に置き換えるだけでも国産材の需要を掘り起こし、林業を活性化させるという期待が寄せられているのです。 「新宿区では、都から多摩産材の利用促進を呼びかけられた2005年度から木製防護柵の導入を進めました。以降、年に約100メートルずつ木製防護柵に切り替えています」と話すのは新宿区みどり土木部道路課の担当者です。 一般的に「ガードレール」と通称される工作物は、その設置場所や用途によって細かく分類され、名称もそれぞれ異なります。ガードレールと呼ばれるものは、道路に設置される「車両用防護柵」のことで、新宿区が鋼製から木製に切り替えているのは「歩行者横断防止柵」と呼ばれるタイプを指します。 「新宿区内の道路のうち、国道や都道といった国や都が管理している道路はたくさんあります。木製防護柵を設置しているのは、そのうち新宿区が管理している道路だけになります。そのため、区内でも木製防護柵を設置できる道路はそれほど多くありません。また、自動車の交通量が多い道路は安全性を考慮して木製への切り替えを見合わせることもあります」(同)
衝撃への弱さや短い耐用年数がネック
木製防護柵は鋼製よりも開発の歴史が短く、まだ開発途上の段階にあります。研究が進めば木製防護柵の強度も高まるといわれていますが、現状、木製は鋼製より衝撃に弱く、腐食などの関係から耐用年数も短いというデメリットがあります。また、製造コストも鋼製の約2倍と高価なことから、切り替えに二の足を踏む地方自治体も少なくありません。 こうした事情から、木製防護柵の普及は進んでいません。早くから多摩産材の木製防護柵の導入を進めてきた新宿区でも、年間の設置距離が約100メートルと短いのはそのためです。 「新宿区が管轄する道路で、木製防護柵が設置可能と思われる場所ではほぼ切り替えが完了しています。今後は、木製防護柵への切り替えから、維持・管理や更新に重点がシフトしていくでしょう」(同) 道路以外では、庁舎の内装、公園の遊具、学校施設などで木材利用に取り組まれています。一部の地方自治体はこうした木材利用にかなり力を入れているものの、一大消費地の東京都や国内全体で、木材利用は大きな潮流になっていません。国産材活用の取り組みは、十分とは言えない状況です。 国産材の消費量を増やさなければ行政が推し進める林業活性化は達成できません。そして、林業を活性化させなければ、花粉症ゼロもまた実現は難しいでしょう。 (小川裕夫=フリーランスライター)