<解説>「チ。 -地球の運動について-」が描く3つの“美” つながる「知」のバトン
「第26回手塚治虫文化賞」のマンガ大賞に選ばれたことも話題の魚豊さんのマンガが原作のテレビアニメ「チ。 -地球の運動について-」。原作は、「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で2020~22年に連載され、15世紀のヨーロッパを舞台に異端思想の地動説を命懸けで研究する人々を描く異色のマンガとして人気を集めた。テレビアニメは2024年10月にNHK総合で放送をスタートし、地動説の証明に挑むメインキャラクターたちの生き様に多くの視聴者が魅了されている。同作は、第1章で登場したフベルトの「神が作ったこの世界は、きっと何より美しい」という言葉に象徴されるように、さまざまな“美”が描かれている。3つの“美”という視点から、第1クールを振り返る。 【写真特集】「チ。」 ヨレンタも拷問!? 希望はあるのか 第2クールも激動
◇新たな「知」地動説の“美”
「チ。」は、C教が力を持つP王国が舞台で、宇宙の中心は地球だとする天動説が信じられ、それに背く地動説は異端として迫害されている。アニメの第1章は、飛び級で大学への進学を認められた神童・ラファウの死、第2章は、代闘士オクジー、修道士バデーニの死で幕を下ろした。地動説の証明に挑むも、異端審問官のノヴァクら教会に研究がバレてしまい、道半ばで死を迎えた。
異端と分かっていながら、ラファウ、オクジー、バデーニらが地動説に魅了されたのは、太陽を中心に地球などの惑星が円運動をするという説を「美しい」と感じたからだ。ラファウは、「僕の命にかえてでも、この感動を生き残らす」と教えに反した自死を選び、バデーニは、地動説を知った瞬間、思わず嘔吐するほどの衝撃を受けた。「夜空がきれいなのは、汚れた底辺の地球から見上げているからだ」と教えられてきたオクジーは、バデーニ、ヨレンタと出会い、「知」を目の当たりにして、異端である地動説を「信仰してる」とまで語るようになった。
「チ。」では、地動説の美しさに魅せられ、新たな「知」を追い求めるキャラクターたちが、強く、美しく描かれている。