<球児よ、大志を抱け>センバツ クラーク記念国際 初勝利に向けて/上 高齢者の町に夢と元気 /北海道
◇地域と一体感、ナインの支え カキーン! 田園地帯に球音が響く。夏には朝練に励む部員たちの元気な声がこだまする。クラーク記念国際のグラウンド近くに住む安藤一彦さん(84)は「年寄りの町で夢をもらっている」とほほ笑む。 深川市郊外の納内(おさむない)町。基幹産業は農業で、高齢化と過疎化が進む。1960年代に5000人程度だった人口は1500人ほどに減少し、65歳以上が半数以上を占める。 この地に、野球部が誕生したのは2014年。同年閉校した納内中学校跡地が、野球部の専用施設向けに譲渡された。翌年、後援会が発足。親元を離れ、寮生活を送る選手たちを地域ぐるみで支え続けている。 寮の玄関にはプラスチック製のコンテナが置かれ、地域住民が新鮮な野菜を差し入れている。後援会副会長を務める安藤さんが発案した「野菜ポスト」だ。米は地元農家から毎年約120俵(7・2トン)を買い付けている。地元の食材が、ナインの活力の源になっているのだ。 安藤さんは「住民は選手たちの喜ぶ顔が見たくて野菜を持っていく。年寄りにしたら生きがい。クラークと地域は共存共栄だ」と顔をほころばせる。 地域の一員として、地元住民の支えを受ける部員たち。この2年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止されているが、納内神社例大祭で毎年みこしを担いで町内を練り歩くなど、人々との交流を大事にしている。佐々木啓司監督(66)は「地域とのつながりや一体感は強く、生徒を育ててくれる。深川に来て良かった」と感謝する。 甲子園初出場は創部3年目の16年夏。聖光学院(福島)と迎えた初戦、七回まで3―1でリードしていた。「おいおい、今日は帰れないぞ」。アルプススタンドで応援していた安藤さんの周りでは、2回戦を見越し、うれしい悲鳴が上がっていた。しかし、八回に4点を許し、逆転負け。 あれから6年弱。センバツ開幕日の今月18日、2度目の夢舞台に挑む。初戦の相手は昨秋の九州大会で準々決勝、準決勝をコールドで勝ち上がり、優勝した九州国際大付(福岡)だ。 安藤さんは「再び、甲子園でプレーする選手を見るのが何よりの楽しみ。甲子園1勝に向け、地元の応援で盛り上げたい」。後援会でツアーを組み、アルプスに駆け付ける。【三沢邦彦】 ◇ 甲子園初勝利に向け、選手を支える人たちの思いを3回にわたり届ける。