なぜアメリカ人は「陰謀論」を信じやすいのか? 「実話に基づく」とする映画にもある“危うさ”の背景
アメリカ映画における陰謀論の想像力
これまでアメリカ映画は、陰謀論を作品の題材として多く活用してきた。 たとえば1997年から始まった『メン・イン・ブラック』シリーズは、アメリカでこれまで語られてきた無数の陰謀論を詰め込んだショーケースのような作品となっており、これまで合計で4作の映画が発表されている。 『メン・イン・ブラック』のベースとなるのは「UFOを目撃した人のところへ黒ずくめの服装の男がやってきて、『決して口外するな』と脅す」というアメリカの都市伝説だ。こうしたうわさ話をベースにした同作では、地球外生命体がすでに地球で数多く暮らしており、政府はその事実を隠蔽している、といった陰謀論がコミカルに描かれる。 『メン・イン・ブラック』のでたらめな想像力は観客を大いに楽しませる。陰謀論は、それを娯楽と割り切って分別を持って眺めるぶんには、実に愉快なエンターテイメントである。だからこそ困ってしまうのだ。 陰謀論の厄介なところは、その無類の楽しさである。現実と虚構の区別をしっかりとつけ、用法・用量を守って楽しむぶんにはいいのだが、こうした虚構が行きすぎてしまうと、やがて「バラク・オバマを護衛するセキュリティは爬虫類型宇宙人(レプティリアン)だ」などとまじめな顔で語りだすことになる。こうなると、「陰謀論は適度に楽しむ遊びです」と駅前に貼り紙でもしておいた方がいいと思う。
90年代に大ヒットした『Xファイル』も…
こうした陰謀論を大きく取り上げた映像作品のなかでもっとも重要なのは、テレビドラマシリーズ『Xファイル』(1993~2002)だろう。 UFOに妹を誘拐された過去を持つ主人公のFBI捜査官モルダー(デイヴィッド・ドゥカヴニー)が、相棒のスカリー(ジリアン・アンダーソン)とともに、超常現象やUMA、オカルト、政府の陰謀、宇宙人などについて調査を続けていくというあらすじだ。 私は『Xファイル』の大ファンで、当時レンタルビデオ店へ足しげく通っては、ビデオを借りて家で見ていた。 このシリーズで取り上げられるテーマは、実際にアメリカで流布している陰謀論を下敷きにしたものが多く、本作さえ見ていれば、アメリカの陰謀論はほぼ網羅できるという百科事典のような内容になっている。エリア51やブラック・ヘリコプターといった有名な陰謀論を知ったのもこのドラマだった。 もちろん同作はフィクションだが、作品としてはいま見ても充分におもしろい。この記事のために一部見直したが、そのふしぎな雰囲気にぐっと引き込まれてしまった。