人の命奪う死刑制度、国際社会からは批判の声 決して一様ではない被害者遺族たちの思い
「愛する家族の命を奪った加害者に対しても、死刑反対と言えますか」 2007年に起きた闇サイト事件で、当時31歳の長女を殺害された磯谷富美子さん(72)は訴えた。 車に拉致、監禁され、現金を奪われた上、ロープで首を絞められて山林に遺棄された。「娘は、本当にむごい殺され方をしました」。3人の男に暴行されて無残に命を奪われ、変わり果てた姿となった娘に対面した時のことを語る磯谷さんの言葉に、会場は静まりかえった。 ただ、被害者の考えは決して一様ではない。死刑制度を維持する日本に対して、国際社会からは厳しい視線も向けられている。(共同通信 佐藤大介)
遺族が「むごい内容」を話す理由
2024年7月4日、東京・霞が関の弁護士会館で行われた「日本の死刑制度について考える懇話会」の会合。磯谷さんは犯罪被害者遺族の立場から死刑に関する意見を述べるため参加した。 事件では関わった男3人のうち、主犯格の男は死刑が確定して2015年に執行され、残る2人は無期懲役となった。 出席者に向かって磯谷さんは「むごい内容をお話ししたのは、死刑反対と軽々しく口に出してほしくないからです」と、言葉を続けた。「残された遺族が前を向いて生きていくためにも、死刑は必要なのです」と力説し、死刑の代替刑としての終身刑導入には「被害者遺族が支払う税金も彼らの生活の足しになってしまう」と批判した。 死刑判決は実質的に、「誰かの生命を奪ったこと」の結果として下されている。そこには被害者がいて、その被害者には家族や親族といった遺族がいる。 磯谷さんをはじめ、殺人事件の被害者らでつくる「宙(そら)の会」特別参与で元警察官の土田猛さん(76)は「人の命を奪えば、命をもって償うべきだ」とし、殺人罪には死刑適用を原則とするよう求めている。「人を殺せば死刑というのが日本文化。犯罪の抑止効果も大きい」。そのためにも死刑制度は不可欠だと、土田さんは強調する。 残された被害者遺族にとって、加害者への怒りは当然の感情だ。「犯人は死をもって償うべき」という遺族の訴えに、共感する人は少なくないだろう。 2019年の内閣府による世論調査では「死刑もやむを得ない」と答えた人が8割に上り、そのうちの6割近くが、理由として「被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」ことを挙げている。