人の命奪う死刑制度、国際社会からは批判の声 決して一様ではない被害者遺族たちの思い
死刑に反対する遺族も 加害者と向き合う
一方で、1997年に8歳の息子をひき逃げ事故で亡くした片山徒有さん(67)は「どんな罪を犯した人でも更生し、社会の中で果たすべき役割がある。厳罰ではなく、同じような被害者を出さないことが一番の望み」と述べ、死刑には反対の考えだ。被害者遺族の立場から、懇話会にも委員として参加している。 片山さんは2000年から刑務所や少年院で「被害者の視点」を語るようになった。受刑者との対話を重ねる中で、自らの罪と向き合うなどの変化が見えるという。「悲しさと苦しみの中で犯人を許せないと叫ぶ被害者像が、メディアを通じてつくられている。しかし、被害者は変わり得る存在であり、それは加害者も同じだと思うのです」 「殺人の被害者遺族と交通事故の遺族では、立場が違うかもしれない」。片山さんはそう思いながらも、家族の命を突然奪われた悲しみや怒りを同じ被害者遺族として共有し、手を差し伸べたいと考えている。それだけに、被害者遺族の感情や不安をいたずらにあおり立てる風潮には違和感を抱く。 罪を犯した人を死刑にしてしまえば更生はできず、なぜそうした事件が起きたかを社会が知る機会も永遠に奪われてしまう。 「犯罪は社会の痛みそのもの。再び起こさないために、時間とコストをかけてでも加害者と向き合うことが必要で、それが被害者の心の回復にもつながります」。片山さんは、そう信じている。
欧州は批判 必要なのは被害者の支援
死刑制度を維持し、死刑執行も続けている日本に対して、見直しを強く求めているのが欧州の国々だ。EUは基本権憲章で「何人も死刑に処されてはならない」と規定し、EUを離脱した英国も死刑を廃止している。欧州で死刑が残るのはベラルーシだけだ。 英非政府組織「死刑プロジェクト」の共同設立者ソール・レーフロインド氏は「日本は世論を理由に死刑を続けるべきではありません」と話す。英国は1969年に死刑を廃止したが、当時は8割近くの世論が死刑を支持していたという。 日本の世論調査でも死刑を支持する回答が多数を占めている。だが、レーフロインド氏は「情報がほとんど公開されていない中での調査は不十分です」と指摘し、政府から独立した国際的な専門家が調査を行うべきだと提案した。 死刑よりも必要なことは「被害者への精神的・経済的なサポートの充実」とし、死刑によって国際的な日本の評価が低下することを訴える。