自販機で400円の「ヒラメの刺し身」を販売!人口数十人の集落で「魚の自販機」を運営する家族の熱い物語とは? 臨機応変に時代の変化に対応する、家族企業の奮闘がそこにあった。
前回の記事では鹿児島県垂水市にある24時間営業の「海ぶどうと魚の自販機」について、果たして儲かるのか、売れ筋商品は何なのか、など気になることを運営者である森水産の森正秋さんに伺った。 【画像】人口数十人の小さな集落で月に50万円も売る「魚の自販機」「400円のヒラメの刺し身」などの様子を見る(13枚) その中で見えてきたのは、コロナ禍で活魚が売れなくなったときに、いちはやく直販の道を探る臨機応変な経営姿勢だった。先を見据えていち早く動く姿勢は、正秋さんの父である1代目の森正彦さんの頃から変わらないという。 そこで、今回の記事では森水産のこれまでの歩みを聞きながら、水産業を取り巻く状況が変化していく中で、いかにして時流に応じて生き残ってきたかを探る。
■「社長になりたい」「憧れの車に乗りたい」思いからヒラメ養殖へ 1代目である森正彦さんがヒラメの陸上養殖を始めたのは昭和54(1979)年。当時、鹿児島ではブリ養殖の勢いがあり、参入した人は “ブリ御殿”が建つと言われるほど儲かるものとされていた。 【画像】人口数十人の小さな集落で月に50万円も売る「魚の自販機」…「400円のヒラメの刺し身」などの様子を見る(13枚) 「周りからは『ブリをすればいいのになんでヒラメ?』と言われました。でも人がせんことが好き。あと、将来を見据えたらヒラメみたいな高級魚志向になるかもしれないと考えて選びました」
その頃、いけす料理屋が鹿児島のあちこちに増えていたという。店内に大きな水槽を設置して、さばく直前までそこで泳いでいた魚を刺し身にして客に提供するスタイルだ。新鮮さと、目で楽しめる雰囲気を売りにしていた。 「あるいけす料理屋でヒラメの造りが確か1万円やったかな。ブリと比べて1キロ当たりの相場がずっと高い。こんなにするんだったら儲かるねって」 ブリはキロ1000~1200円、ヒラメは天然物ならキロ1万円、養殖物でも5000~6000円くらいの相場だった。もちろん捌きやすさや歩留まり、育てやすさ、飼料転換効率などの条件が違うため単純比較はできないが、それでも圧倒的にヒラメが高かった。