米で大ヒットの映画「オッペンハイマー」 子孫らが語る原爆開発と投下から得るべき教訓とは(4)
■原爆開発がAIの開発に投げかける教訓
――原爆の最大の教訓は、広い意味では科学者が新興技術というものとどう向き合うか、ということでしょうか? 全く同じ意見です。多くの人々が同じ考えです。AI研究に関わる人々が、オッペンハイマーの核実験時の「我は死なり、世界の破壊者なり」という発言を引用し、懸念を表明しています。AIを解き放った時、長期的に何が起こり得るかということです。 マンハッタン計画は新たな技術に関する教訓、つまりその長期的な影響や、意図せぬ影響を考えるよう我々に促しています。技術を持っているなら使うべきだ、それが(理論的に)可能だからやらなくてはいけない、と必ずしも考えてはいけないのです。核軍拡競争の前に自問自答しなければならないことです。他のテクノロジーでも同じです。
――アメリカでは多くの若い世代が映画を観ていますが、若い世代が1945年の原爆開発から学ぶことは何でしょうか? 核なき世界について、何を話し合っていけばよいでしょうか? 1945年から78年が経ちました。なので原爆開発が話題になり、人々が考えるようになるのは良いことだと思います。核拡散が続き、世界最大規模の核兵器を保有する国の指導者が核兵器の使用について話している今、映画は人々がこの破壊的な兵器と核廃絶について真剣に話す重要なきっかけになり得ます。 もうひとつ、若者が核兵器の開発・使用と、他のテクノロジーの開発・使用を結びつけて考えてくれることを願います。考えは同じです。この技術を開発できるかやってみよう、その結果は考えなくてもいいじゃないか、という技術者や科学者もまだいます。しかし、核兵器を開発したマンハッタン計画の参加者は後悔しています。SNSの開発に関わった人たちの中にも、取材に対し、「怪物を作り出してしまった」と語っている人たちがいます。こうなるとは予想しなかった、そんな意図はなかったと言っても、開発の結果、それが我々に跳ね返ってくるのです。