ベンチャーで急増「ダウンラウンド」は悪手なのか 厳しさを増すスタートアップの資金調達環境
高井:噛み砕いて言うと、スタートアップは株式上場しているわけではないけれども、資金調達するときには「1株=〇円」という計算をして、株式を発行するのが一般的かと思います。その株価を決める際、「将来これくらい成長するだろう」というのを鑑みて試算するわけですね。 その試算を甘めにしてしまうと、株価が(実力以上に)高くなってしまう。次の資金調達のときに(実力に即した形で)前より安い株価を提示するとなると、前に高い株価で出資した人は評価減をしなきゃならない。
「安売り」という表現が適切かはさておき、そういうことをしたくないという力は働くと。でもこのようなケース、「ダウンラウンド」と言うそうですが、直近では増えてきているんですね? 宇都宮:はい。増えてきている現状があります。 ■フェアバリューになったのなら 高井:これは意外感がありました。なんとなくベンチャーって、市場全体で伸びているイメージがあったので。するとやはり、2~3年前はややバブルだったのかな? と考えられそうですが、いかがでしょう。
宇都宮:そうですね、編集担当としてはやや言いづらい部分もありますが(苦笑)、バブル感があったことは否めないと思います。 高井:マーケット記者を長くやってきた自身の感覚としては、フェアバリューになったのならそれで調達すればいいじゃないか、と思います。お金を取って、それでビジネスを伸ばすことを最優先すべきじゃないかと。 宇都宮:まさにその通りだと思います。ダウンラウンドで資金調達をしているということは、足元をいま一度見つめ直して、ちゃんと適正な価格でお金を入れようと決断したことの表れなので、一概に悪いというわけでもないかなと思います。
(ダウンラウンドを経て)また事業を成長させて、シリーズを積み重ねて評価額を上げていけば、それはそれでハッピーなことになるかなと。 高井:まあ、また下がってしまうと大変ですけど(苦笑)。
宇都宮 徹 :東洋経済 記者/高井 宏章 :経済コラムニスト / YouTuber