自民党大敗の裏で起きていた変化 高市早苗氏の街頭演説で掲げられた横断幕『軍拡よりも生活』に支持者は…【ヤジ排除裁判のその後】
自民党が大敗した衆院選で起きていた、もう一つの大きな変化
2019年、安倍総理(当時)の街頭演説中に北海道警察が行ったヤジ排除。その後の裁判で、北海道に対する賠償が確定したあとの初めて選挙となった。現場を取材すると、5年前と大きく変わった風景が広がっていた。そこには悲しみを胸に声を上げる人の姿があった。(HBC北海道放送 山﨑裕侍) 【この記事の画像を見る】ヤジ排除裁判のその後…自民党大敗の衆院選の裏で起きていた変化
「ヤジ排除問題とは」
2019年の参議院選挙中、札幌で街頭演説をしていた安倍総理(当時)にヤジを飛ばしたり、批判的なプラカードを掲げたりした複数の市民が、北海道警察に排除された。このうち大杉雅栄さん36歳と桃井希生さん29歳の2人が表現の自由を奪われたとして北海道警を所管する北海道を相手に国賠訴訟を起こした。2024年8月、最高裁が原告と被告双方の上告を退け、桃井さんの排除は違法だとして北海道に賠償を命じた札幌高裁の判決が確定した。一方、大杉さんの排除については適法だとした高裁判決が同様に確定した。
石破総理は街頭演説を見送る
10月18日、石破茂総理は野党との接戦が伝えられている北海道に入り、石狩市や岩見沢市で自民、公明両党候補の応援演説をした。当初は札幌の大通公園で街頭演説をする予定だったが、警備上の理由で見送られた。結局、札幌では、石破総理は2箇所の応援演説を行ったが、いずれもホテル内で支持者に向けたものとなった。
安倍氏が総理のときは、大通公園で街頭演説をしたり、公園内を練り歩いて市民らと握手したりしていた。私も何度か現場を取材したが、総理と市民のあまりの距離の近さに、「もし群衆の中に敵意ある者が紛れ込んで、凶器を持って襲ってきたら完全には防げないだろう」と感じていた。警察は事前に警備計画を作るが、警備関係者の話によると、総理に市民ともっと握手させたいという自民党サイドの要望で警備の変更を余儀なくされたこともあったという。
「政治家と市民が直接触れ合える唯一の場」
安倍氏の銃撃事件や岸田前首相の襲撃事件が起きて以来、選挙の演説現場では厳重な警戒態勢がとられている。演説を聞くためには、聴衆は手荷物検査や金属探知機検査を受けたうえで、数十メートルも離れた場所に設置された柵の中に閉じ込められる。だが、選挙における街頭演説は民主主義社会において貴重な機会だと阪口正二郎早稲田大学教授(憲法学)は指摘する。 「政治家と市民が直接触れ合える唯一の場」「ヤジやプラカードなどは表現方法として認めておかないと、世の中にはどんな人が困っていてどんな意見があるかわからない」 今回、石破総理が札幌で街頭演説を行わなかったことによって、有権者は投票の判断材料を得られなかっただけでなく、石破総理の政治姿勢や自民党の政策に反対する人にとっては、意見表明する機会を失ったといえる。
【関連記事】
- 「戦いを通して学ぶのが民主主義」映画監督・是枝裕和氏が語る『ヤジと民主主義・劇場拡大版』排除された女性のそばにいた人の後悔に触れる
- 新宿駅で声を上げる『デスノート』出演俳優の半径5メートルの空洞…仕事激減も「俳優は発言しないと存在意味がない」無関心を切り裂く“ぼっち”単独デモ「ガザでの大量虐殺を止めよ!」
- 憲法9条を示す『No9』Tシャツ着用で警察官から「どこに行くんですか?」…ピーター・バラカン氏が憂う「メディアが政府の言いなりに」“権力の番犬”が果たす役割
- 「自分は見ていただけ」集団暴行死事件で川村葉音容疑者「交際関係をめぐりトラブルになった」と八木原亜麻容疑者、男子大学生は2人で向かった公園で暴行を受ける
- 「女装した男性の避妊具なしの性交」が事件の発端、瑠奈被告と父親の公判も見すえた攻防…検察「遺体を弄ぶことまで計画、“奴隷扱い”の両親は抗えず」弁護人「SMプレイのはずが『おじさんの頭を持って帰ってきた』で、この世の地獄」