プーチン、大激怒で「ヤバい逆襲」が始まる…西側諸国がサミットで決めた「ロシア資産活用のウクライナ支援」の波紋
ゼレンスキー大統領の要求
そこでG7は対応策として、「ウクライナのための特別収益加速型」(ERA)融資という新たな枠組みを立ち上げて、今年の年末までに500億ドル(約7兆8千億円)の追加の資金調達が可能になるようにすると表明した。その際、G7各国の市民がこれ以上不満を募らせることがないように、融資の返済には、西側が制裁措置として凍結していたロシアの金融資産などの運用収益を充てることにしたというのである。 新聞やテレビの報道によると、米政府高官が記者団に語った500億ドル融資の分担は、「EU及び欧州諸国が少なくとも総額の半分以上」を、「米国が最大500億ドル」、「カナダが50億ドル」となっている。ちなみに、「日本は最終調整している」段階のため、金額を提示していないが、貸し出す資金は軍事目的に使用されない形を検討している模様としている。 この米政府高官は、また、ロシアがウクライナへの損害賠償を支払わない限り、G7は資産の凍結を続ける方針で合意していると明かした。 また、関連して、サミット首席者の1人であるドイツのショルツ首相は、今回の枠組みは長期的なウクライナ支援に道を開くとの認識を示し、「歴史的な決断になる」と自画自賛してみせた。 一方、ウクライナに対する侵略戦争の開始後に、西側が制裁措置として凍結したロシア資産は3000億ドル規模に達している。このうちの約3分の2は、ロシアが開戦前からEU域内に預けていたものだ。証券取引等に伴う資金や有価証券のやりとりを専門とするベルギーの決済機関ユーロクリアーがかなりの部分を管理していた。 そして、このことは、今年2月27日付の本コラムでも書いたが、ウクライナのゼレンスキー大統領は早くから、この凍結した資産のウクライナへの引き渡しを求めていた。 ゼレンスキー大統領の要求を呑むことは国際法違反に問われる恐れが強く応じられないものの、その意向は最大限に組む形で、ドイツ、フランスなどのEU諸国は凍結した資産そのものを引き渡すのではなく、凍結した資産の運用収益をウクライナ支援に充てるための法整備を進めてきた経緯がある。 だが、当時、米国は、凍結した資産を完全に没収することとし、丸ごと支援に充てるべきだと主張していた。この米国の姿勢に、英国、日本、カナダの3カ国は理解を示しており、G7として一枚岩になっていなかったのだ。国際法上、米国案の方がより大きな問題になりかねない一方で、より多くの資金を短期的にウクライナ支援に充当できるとの見方も存在した。 事態が大きく動き始めたのは、ロシアのウクライナ侵攻からちょうど2年が経過した今年2月24日、G7首脳が参加して開催したオンライン会議だった。今回同様、この時も閉幕後に、ウクライナへの揺るぎない支援を約す共同声明を発表した中で、今回合意したスキーム作りを進めることで合意したことが明かされていたのだ。 具体的には、「EUが制裁で凍結したロシア政府の資産からユーロクリアーなど証券集中保管機関で得られる特別収入に関するEUの法的措置の導入を歓迎し、適用可能な契約義務に従い、適用可能な法律に準拠して、それらの使用を促進するさらなる措置を奨励する」ほか、「担当大臣たちに、(今回の)アプリリア・サミットまでに、国内法と国際法に照らして、凍結しているロシアの政府資産をウクライナ支援のために活用するのに可能なすべての手段を詰めさせる」との文言が明記されていた。