プーチン、大激怒で「ヤバい逆襲」が始まる…西側諸国がサミットで決めた「ロシア資産活用のウクライナ支援」の波紋
約7兆8千億円の資金支給を公約
とはいえ、今回の措置は、必ずしも、ウクライナが侵略戦争に対峙していくために必要な資金を円滑に調達できると保障したものと断言するのは難しい。 実際のところ、ロシアのプーチン大統領は、G7サミット開催中の6月14日、ロシア外務省高官との会議の席で、凍結したロシア資産の運用収益をウクライナ支援に充てる計画に対して、「西側の窃盗に他ならず、処罰は免れない」と、強い調子でG7諸国への報復を示唆してみせた。 G7諸国は、こうしたプーチン氏の恫喝や報復にひるむことなく、ウクライナ支援を毅然としてウクライナ支援を続ける覚悟を求められている。 このほか、金額的に十分と言えるかにも疑問が残る。というのは、ドイツのキール世界経済研究所の集計によると、各国が一昨年初めからの2年間に表明したウクライナに対する軍事や人道のための支援は、トップのEUが円換算で約13兆7500億円、2位の米国が約10兆9600億円に達したからだ。逆に言えば、上位2カ国だけで、平均して年に12兆3600億円弱を負担してきた計算になるのである。 これに対し、冒頭で記したように、G7が今回のサミットでウクライナへの支給を公約した資金は約7兆8千億円だから、単純計算上で、ウクライナは早ければ来年後半に再び、現在と同じようにロシアによる侵略戦争と対峙する資金に窮する事態に陥りかねない。 ところが、米国では11月に大統領と連邦議会の上下両院議員の選挙があり、仮に現職のバイデン氏が勝利したとしても、議会ではウクライナ支援に慎重な共和党が勢力を伸ばす可能性が決して小さくない。 また、この夏に行われる英国やフランスの総選挙でも、現政権のウクライナ支援を批判している極右政党が議席を大幅に増やす勢いだ。 仮に、米国で、トランプ前大統領が復権する事態になれば論外だろうが、そうならなくても、来年は今以上に、ウクライナ支援を巡る西側の結束の維持が難しい政治情勢に陥っている懸念が大きいのである。 結局のところ、制裁の名目で凍結してきたロシアの在外資産の運用収益での回収を当て込んだ、今回の鳴り物入りのG7のウクライナ支援策は、1年程度しか賞味期限のない備忘策に終わるリスクを抱えている。
町田 徹(経済ジャーナリスト)