美術作家としてのル・コルビュジエにフィーチャー。約130点の作品からなる展示が大倉集古館で開催。
『特別展 大成建設コレクション もうひとりのル・コルビュジエ~絵画をめぐって~』が東京・虎ノ門の美術館〈大倉集古館〉にて、6月25日から開催される。20世紀を代表する建築家として評価されるル・コルビュジエは、数多くの美術作品を残したアーティストとしての顔も持つ。本展では、大成建設が所蔵するル・コルビュジエ・コレクションの中から約130点の作品が展示される。 【フォトギャラリーを見る】
1917年にパリでの生活をはじめたル・コルビュジエは、画家アメデ・オザンファンとともに「ピュリスム」を提唱した。これは「キュビスム」を批判的に継承したもので、大量生産の工業製品を普遍的なオブジェとしてそこに美を見出し、対象を幾何学的な形態にまで単純化。黄金比や正方形を基準にした厳格な構図のなかで描いた。 1920年代末以降になると、絵画の中心的テーマとなったのは女性だった。ル・コルビュジエが描く女性たちは、その姿態のかたちを描くことにのみ力が注がれ、モデルの女性たちの内面を描くことには関心がなかったため、女性たちの姿はしだいにデフォルメがすすみ、最終的には人体とは思えないほど変形していった。
第二次世界大戦に入ると、一時的に事務所を閉めて疎開。その間、ル・コルビュジエは絵画の制作に励み、身の回りの風景を描くだけでなく、自分が昔描いた作品をもとに新しいアイデアを生み出していった。 そして戦後になると、牡牛、翼のある一角獣、開かれた手、イコンなどで、いずれも物語性を秘めた象徴的なモチーフを繰り返し描くようになったル・コルビュジエ。 絵画表現は、油彩に加えて版画やパピエ・コレに拡がった。象徴的なモチーフが描く内容の中心となると、より記号的で平面的な表現となり、画面は大きく、単純化された描線と大きな色面で表現され、グラフィカルな表現へと変化していく。
なお、本コレクションの素描やパピエ・コレ作品がまとまって公開されるのはおよそ30年ぶりのこと。会期中には古谷誠章(建築家、早稲田大学教授)、藤井由理(建築家、早稲田大学招聘研究員)、青木淳(建築家、京都市京セラ美術館館長)、加藤道夫(東京大学名誉教授)、中村研一(建築家、中部大学教授)、隈研吾(建築家、東京大学特別教授、東京大学名誉教授、早稲田大学特命教授)らによる講演会、鼎談も別会場で開催される。 「私の探求や知的生産の根底の秘密は、絶え間ない絵画実践のなかにあるのです。」(『ル・コルビュジエ みずから語る生涯』中央公論美術出版より引用)と記されるように、建築を含めたル・コルビュジエのすべての創作活動の根底にあった、彼の絵画への情熱を本展を通じて感じることができるだろう。
『特別展 大成建設コレクション もうひとりのル・コルビュジエ ~絵画をめぐって~』
〈大倉文化財団 大倉集古館〉東京都港区虎ノ門2-10-3〈オークラ東京前〉。TEL 03 5575 5711。2024年6月25日~8月12日。10時~17時(入館は16時30分まで) 金曜日は19時まで開館(入場は18時30分まで)。月曜休み(休日の場合は翌火曜日)。一般 1,500円ほか。
text_Naoki Nakajima editor_Keiko Kusano