【F1分析】角田裕毅らを翻弄したマグヌッセン&ハースF1の頭脳戦。そのレースペースを分析……そりゃあ抜けないわけだ!
■ハースF1の戦略は、もちろんルール違反ではない
なお今回のマグヌッセンやハースの戦い方はフェアではないという意見もある。実際RBの首脳陣は、ハースに対する激しい批判を展開している。 しかしマグヌッセンは、ペナルティ覚悟で角田をコース外から抜いたわけではない。もしペナルティ覚悟でオーバーテイクしたのなら、オーバーテイクを完了した直後からペースを落とすはず。しかしその後4周は、ペースを落としている兆候はない。そしてひと度ペナルティとなってしまえば、その時点でポジションを落とす義務もない。 ペースを大きく落として後続を抑えるという戦略も、禁止されたものではなく、時折同様の指示がなされることがある。まあ、その大半は失敗してきたが……。 つまり、ルール内の戦い方で、チームメイトを最大限にサポートしたわけだ。そういう戦略を組み立て、それを着実に遂行したハースは、賞賛されるべきだろう。そしてそれだけ今の中団グループでは、1ポイントは実に貴重な結果なのだ。 もちろんこのペナルティによって、有利不利が出る可能性が明るみになったとは言える。そのため、運用に関する議論が今後行なわれる可能性はあるものの、それはまた別の話だ。 なおこのハースの作戦については、してやられてしまった角田が、次のように語っている。 「彼(マグヌッセン)の観点から言えば、チームのために良い仕事をしたと思います。F1はチームスポーツであり、ニコはそれでポイントを獲得しました。つまり、彼は良い仕事をしたんだと思います」 「彼が危なかったと言うことは簡単です。でも同時に、彼の考え方も理解できます。チームがポイントを獲るのに貢献し、ポジションを守るためにはできることは何でもやろうとしただけだと思います」 「確かに彼は危険な時もあり、ターン2ではクラッシュしかけました。フェアだったとは言えないかもしれませんが、彼の戦いを理解する必要があると思います」 なお角田のRBは、決勝でペースが足りなかったというのも事実。そのため、ライバルをオーバーテイクすることができず、一瞬の突きを突かれたとはいえ、ライバルにオーバーテイクされてしまうシーンも少なくなかった。RBには、課題が多く残っているようだ。
田中健一