【F1分析】角田裕毅らを翻弄したマグヌッセン&ハースF1の頭脳戦。そのレースペースを分析……そりゃあ抜けないわけだ!
■マグヌッセンの絶妙なペースコントロールをグラフでチェック
上のグラフは、サウジアラビアGPを10番手から14番手でフィニッシュした5人のドライバーのレースペースの推移を、折れ線グラフで示したモノだ。縦軸がラップタイムで、上に行けば行くほど速いということを示している(縦軸の目盛りはラップタイムを秒に換算したもの)。一方で横軸は周回数だ。 このうち、濃いピンクの実戦がマグヌッセンのペースを示したモノである。 マグヌッセンは22周目からペースを落とし、それに連られるように角田をはじめ後続のマシンも一気にペースを落とした。一方でヒュルケンベルグ(濃いピンクの点線)は、ペースを上げていることがよく分かる。 ヒュルケンベルグはペースを上げ、マグヌッセンはペースを落とす……こうすることでふたりの間隔は開いていき、32周目の段階で20.7秒差。今回のレースでは、ピットストップ時のロスタイムが20秒程度であったため、ここでピットインすればヒュルケンベルグはマグヌッセンの前でコースに戻れる……するとヒュルケンベルグは33周目にピットストップを行ない、計算通りマグヌッセンの前でコースに復帰した。 この過程では、マグヌッセンに対してチームから細かな指示も行なわれていたようで、「もっとペースを落として欲しい。そして後続を抑えるんだ。もうひとつ10秒ペナルティを受けてしまった」という無線交信があったことも確認できる。
■マグヌッセン、後続を抑える余裕が十分にあった
なおヒュルケンベルグを先行させることに成功し、自身の”抑え込む”という役割をやり遂げたマグヌッセンが、34周目から一気にペースアップしているのも、このグラフから読み取ることができる。後方で抑え込まれていたマシンたちは、これについていくことができなかった。 任務を完了した後のマグヌッセンは、かなり使い古したタイヤだったにも関わらず、タイヤを交換したばかりのヒュルケンベルグと同等のペースで走った。つまり本来のペースより、2秒前後ペースを落としていたわけだ。そしてその余裕を、要所要所で防御のために役立てた……これでは、他のマシンは簡単には抜けないだろう。 前出の小松代表は、次のように語る。 「正直言って、ケビンは素晴らしい仕事をしてくれました」 「あるタイミングで、ピットストレートで角田に先行されてしまい、その策略はうまくいかなかったと思いました。でもケビンは、ターン1で彼をアウトに追いやり、ポジションを取り戻しました。素晴らしい、素晴らしい仕事でした」