道後温泉の記憶を継承するアート 大竹伸朗が“描き”重要文化財を守ったテント膜「熱景」の再生
ミリ単位での調整と手間のかかるリメイク工程
長い間、雨風にさらされていたテント膜は汚れ、袋に折りたたんで保存されていたためシワが入っていた。一枚一枚、丁寧に伸ばしては汚れを落とすところからスタートだ。 TMトミオカ代表取締役・宮道享さん: 結構折ジワ・畳ジワっていうのがかなりひどい状態なんで、これをテントを加工する際はやっぱり平らな状態で加工しないといけないので、こうやって広げて、今やっているところです。 作業してる人からは「重要文化財を囲っていたので、すごい感慨深いなと思いまして。ちょっと汚れをちゃんと落としてからみんなに届けたいと思います」と意気込みを感じる。 一度加工したテント膜のリメイク。そこには、地味に手間のかかる作業が山積みだった。 「今の位置が合わせちょうどいい。これ3mm、5mmかかるやん。で、1回これ合わしてみよう。合わしてちょっと加減だけみよう」と作業している人たちが話し合っていた。 TMトミオカ統括マネージャー兼工場長・山本高久さん: テントのこの三角の屋根の部分の一部分ですけど、これを何枚も切り出して、これをつなぎ合わせて、上の屋根の部分を作ってやってます。 三角屋根のテントは何枚かのパーツを継ぎ合わさなければならない。 しわを丁寧にのばしながらそのパーツの大きさをミリ単位でそろえていく。 そして、接着部分にインクがついているとうまくテント同士がくっつかないので、インクだけを削り取っていく作業も行われていた。 TMトミオカIJPサイン事業部課長・北川裕樹さん: 機械で高周波溶着して溶かしつけるっていうのが、材料同士を溶かして混ぜてひっつけるんですけど、間に別の素材のインクの層だったりを挟んでいたら、表面をちょっと削り取ってやらないと材料同士がつかないので、ちょっと特殊な場合にこういう工程が入ってますね。 そして、3月に53張りのリメイクテントが完成した。 大切に畳んで袋に詰めていく。 TMトミオカ統括マネージャー兼工場長・山本高久さん: 53校分(テントの)生地がとれるかドキドキしながらずっと作ってたんですけど、これで子どもたちが喜んでくれたら感無量です。 TMトミオカIJPサイン事業部課長・北川裕樹さん: いろんな人に助けていただいて作っている途中もずっと胃が痛いみたいな思いがあったんですけど、地域に残っていくものが作れて感無量。
道後温泉のテント膜が紡ぐ地域の絆
4月末、半年間にも及んだテント膜のリメイクも完成し、贈呈式が行われた。 松山市の番町小学校にもリメイクテントが届いた。 子どもたちへのお披露目は新1年生を迎える会だ。上級生に手をひかれて1年生たちがテントをくぐって入場した。 新しいテントをみた子どもたちは「これを運動会で使えるのはいいな」「カラフルで元気がでました」「道後温泉で使われていたすごいテントが番町小学校に来たからとてもワクワク」などうれしそうに話した。 建物を守り、町ゆく人目を楽しませ、また次なる役目へと姿を変えてゆく。 子どもたちに楽しい思い出をこれからたくさん作れますように。 (テレビ愛媛)
テレビ愛媛