「リベンジで中学受験に狂う親も…」 11月の“新年度”を前に知りたい「小学校受験」に“向いている家庭”と“向いていない家庭”
狭き門ゆえの高倍率
さて、そのような特徴に私立小学校の難点も隠されています。それは、選択肢の少なさです。 東京都内で私立中学校は187校あるのに対して、私立小学校はわずか55校(ともに学校基本調査より)。そこには中高の併設がないところもありますから、いわゆるエスカレーターで高校や大学まで進学できる小学校は50校弱に絞られます。さらに、そのうち併設中学の受験偏差値(四谷大塚調べ)が、一つの目安であろう60を超える学校は9校ほど。小学校受験そのものに偏差値はありませんが、併設中学の受験偏差値を物差しとした場合、教育熱心な高学歴層の親が満足する偏差値帯の学校は極めて少なく、出願倍率も5~10倍近くになるのが実情です。 では、昨今人気の私立小学校は一体何が魅力なのか。 よく耳にするフレーズが「中学受験回避」でしょう。中学受験生は小学校高学年ともなると、塾通いと勉強漬けの日々。負荷は様々ですが、概ね夏休みもない過酷な日々が続きます。それはやりすぎだろうと考えた親御さんがたどり着いた先が、私立中学に内部進学ができる附属小学校という選択肢です。習い事やスポーツ、英語学習など、受験勉強に縛られない、いわゆる小学生らしい時間を過ごすことができます。 しかし、この場合注意すべきは、中学受験の偏差値表を忘れることです。そこへのこだわりが残ったままだと、少ない選択肢しか目に入らず、発達に見合わない過酷な負荷を幼児に与えたり、結果として小学校受験で合格できず、リベンジに狂ったような中学受験を強いたりする可能性が高くなります。
偏差値を求めるなら……
私立小学校の本質的な魅力とは何か。それは人格形成の土台を作る初等教育の時期に、家庭の求める教育を体現している教育環境を選べることに尽きます。ご存知の通り、私学の教育方針は様々です。家庭、子どもに合う環境で初等教育を学ぶ。見据えるのは学校の知名度や受験偏差値などの入り口や通過点でなく、その学校でどう育つか。「我が子の心身学力が最も成長できる環境」を選べることが、私立小学校の本質的な魅力でしょう。 このように紐解くと、話題の小学校受験とはいえ、向いていそうなご家庭と向いてなさそうなご家庭も見えてきます。どうしても偏差値が頭から離れないご家庭は、素直に中学受験に挑むことをお勧めします。もしくは、私立小学校にも中学受験を経てハイレベルな中学校を目指すことを前提とする学校がありますから、そちらのチョイスがよろしいでしょう。中学受験も、長期目線で取り組めば、適切な学習負荷で十分乗り越えられます。 一方で、小学校から高校の12年間や、さらに大学まで含めた16年間の長期的な視野で、家庭や子どもに合う一貫した教育をと考えるご家庭は、初等教育からの一貫校をよく調べていただければと思います。知名度や人気度に囚われず、ご家庭の教育方針に合った学校を探してみてください。