＜神・D＞9回、左前打を放った阪神・近本（撮影・岸　良祐）　

　◇セ・リーグ　阪神0ー2DeNA（2024年9月30日　甲子園） 　熾烈（しれつ）なタイトル争いの主役は決して譲らない。DeNA3投手から無安打に封じられ、迎えた9回。先頭で打席に入った阪神・近本が、守護神・森原から左前打を放った。継投ノーノーを打ち砕く鮮やかな快音を響かせ、ヤクルト・長岡に並ぶ159安打目。前日29日に一度は抜かれながら、再び肩を並べてみせた。156安打で追う広島・秋山も含めた最多安打バトルは、いよいよ最終章に突入した。 　「（9回まで無安打でも）どの打席もやることは変わらない。結果的にヒットになったのでよかったです」 　近本が残す試合は10月3日DeNA戦（横浜）のみだ。逆に長岡は3試合、秋山も4試合を残す。打席を稼ぐべく、ともに1番での出場が見込まれる。だからこそ最終戦で、一本でも多く安打を稼ぎたい。昨年11月、「NPBアワード」に出席した際も21年以来の最多安打獲得へ強い意欲を見せていた。“有言実行”の戴冠へ向けた道は険しくとも、猛虎のリードオフマンは、泰然自若の精神で挑む。 　「誰かと競うって意識するよりは、自分の打撃ができるかどうか。自分のできることしかできないので」 　新人の19年から5年連続で個人タイトルを獲得した。仮に今季も継続すれば、赤星憲広を超える球団野手最長記録。目下18盗塁もリーグトップ。2位のDeNA・梶原とは5差ながら、相手には6試合が残る。3年連続盗塁王の当確ランプへ、こちらも安打同様、横浜で上積みがほしい。 　「（タイトルは）意識はしないけど、最後まで自分の成績を意識しながらできるっていうのはなかなかなかった。それを楽しみながら頑張りたい」 　最多安打と盗塁王の2冠なら、自身初だ。連覇は逃しても、必ず手にしたい勲章がある。確かな目標へ向け、近本は最後の力を振り絞る。（八木　勇磨） 　○…近本（神）は新人の19年から盗塁王4度、最多安打1度の5年連続個人タイトル獲得。阪神選手の新人からでは01～05年赤星憲広の5年連続盗塁王獲得に並ぶ球団野手記録。今季も個人タイトル獲得で新人から6年連続ならプロ野球初になる。なお過去には58～63年に長嶋茂雄（巨）が新人から6年連続で最多安打、投手では67～73年に江夏豊（神）が奪三振と勝利などで7年連続のトップだったが、当時はそれぞれ安打と奪三振が表彰の対象外だった。