「陰謀論」にハマる人が後を絶たない根本原因、フェイクニュースとの違いは何なのか
■乖離を埋めるためのストーリー Q 陰謀論はどういうとき、どういう経緯で生まれますか。 大統領選挙に敗北したトランプが「不正選挙」と主張したり、自民党に選挙で勝てない左派・リベラル勢力が、自民党はさまざまな団体や組織の傀儡(かいらい)になっていると語ったりする事例からもわかるように、陰謀論は目の前で起きている現実を是認できないときに生まれやすい。「あるべき現実」との乖離が大きいとき、その乖離を埋めるためのストーリーとして陰謀論が生まれ、支持を得ていく。
陰謀論は演繹法的な考え方で組み立てられる。自分の考えに沿う沿わないにかかわらず、一つひとつの事実を積み上げることで真相に迫っていく帰納法に対し、陰謀論は望ましい結論が先にあり、その結論に合うような理屈だけを抜き出して組み上げる。 「安倍元首相は闇の組織に暗殺された」という結論が最初にあり、ここに向かって「警備が不自然に薄かった」「銃創の位置に不審な点がある」「手製の銃で人を撃てるわけがない」といった、答えに合う理屈だけが組み上げられ、そうでない証拠や論理については「当局は事実を隠蔽している」と考えて、陰謀論思考はどんどん加速していく。
Q 陰謀論に陥りやすいのはどういう人? 政治や社会のあり方に強い関心を持っている人ほど陥りやすい傾向がある。寝ても覚めてもそればかり考えているような人は黄信号だ。とはいえ政治や社会に関心を持つことはとても重要。日常の対面でのコミュニケーションを大切にしながら、「ほどほどに」という加減が大事だ。 Q 陰謀論を信じ込むとどんな支障がある? 離脱させる手だては? 陰謀論は、単にその人の評価を低下させるだけでなく、家族や友人など身近な人々との関係まで断ち切るケースが多々ある。早期に離脱させてあげたいところだが、一度その沼にハマると、その思考から離脱することは難しい。陰謀論は「思考」ではなく「信念」となるからだ。思考は変えられるが、信念はなかなか変えられない。