米利下げ 日銀利上げ見送り、揺れるマーケット 専門家の見解は?【Bizスクエア】
――自分たちの政策変更のせいで、また市場が崩れたと言われたくないからか。 東短リサーチ 加藤出氏: 利上げ局面で中央銀行に必ず批判は来るが、経済全体のバランスをとるには、利上げしなければいけない。極力、批判を避けたいと思っているとこういう(市場が荒れる)ことになってしまう。過剰な慎重さに思える。 ――政治への慮りもあるのか。 東短リサーチ 加藤出氏: ある。特に7月の時は、岸田首相(当時)も、茂木自民党幹事長(当時)も円安が進んでいたので利上げを促していたが、今回はまだそういう話が政府・政治サイドから来ていない。また2025年度予算もまだ流動的ということもあって、遠慮している感じはある。 ――政府が日銀に「利上げしてくれ」と言うことは、何十年に1回ではないか。 東短リサーチ 加藤出氏: 7月のケースも極めてレアケース。 実は、消費者物価指数は上がっている。12月20日に発表された「11月の消費者物価指数」は、変動の大きい生鮮食品を除いた総合が、前年同月比で2.7%上昇した。政府の電気ガスの補助金が縮小したことに加え、食料の値上がりが加速した影響が出ている。 ――物価はオントラックというより、上振れしているのではないか。 東短リサーチ 加藤出氏: ガソリン、電気ガスへの補助金がなければ全体にもっと上。目標の2%よりも実際はかなり上振れした状態が約3年続いている。決して放置していい状況ではないが、現実にガソリン補助金が減るというだけでガソリンスタンドに大行列ができるほど、物価上昇に困っている国民が多い。ただ日銀は「急ぐ必要はない」と、国民の方を向いていない。 背景にあるのが為替相場。円安が進んでいる。一時期、円高に戻ったが、ズルズル下がって、今回の「利上げ見送り」の報道が出た後に一気に7円ぐらい円安になった。 東短リサーチ 加藤出氏: 先週の植田総裁の会見で、次の利上げにとても慎重という姿勢を示した。その発言をすれば円安が進むのは明白なので、事実上確信犯的に出たともいえる。狙っているわけではないにしても、円安になっても仕方ないというつもりで話している。