gamescom主催者を直撃。欧州最大のゲームイベントはゲームファンやクリエイター、コミュニティのニーズに合わせて進化し続けている【gamescom 2024】
2024年8月22日~25日の5日間にわたってドイツ・ケルンメッセにて開催され、盛況のうちに幕を閉じたgamescom 2024。 【記事の画像(14枚)を見る】 “ヨーロッパ最大規模のゲームイベント”と謳われるgamescomの開催にあたって、ファミ通.comでは折に触れ主催者にお話をうかがってきたが、2024年もインタビューをさせていただく機会を得たのでその模様をお届けする。 インタビューに応じてくださったのは、gamescomを主催するケルンメッセ gamescom ディレクター、Tim Endres(ティム・エンドレス)氏とドイツゲーム産業協会であるgameのgamescom & イベント担当ディレクター、Stefan Heikhaus(ステファン・ハイクハウス)氏。両氏に、gamescom 2024の成果とこれからの展望をうかがった。 ※インタビューは会期2日目(8月23日)に実施。 右がティム・エンドレス氏で左がステファン・ハインクナス氏。ドイツゲーム産業協会の名称がgameということでストレートなのもドイツらしい(?)が、ケルンメッセがgamescomの運営に参画しているというのも、最初聞いたときは少し意外だった。それだけケルンメッセという会場を最大限に活かした運営をしているのだろう。 Tim Endres氏(ティム・エンドレス): ケルンメッセ gamescom ディレクター Stefan Heikhaus氏(ステファン・ハイクハウス): game gamescom & イベント担当ディレクター コミュニティやゲームファンに焦点を当て、より国際的になった ――gamescom 2024の手応えを教えてください。: ティム: “gamescom Opening Night Live”は非常に好評で、多くのよいフィードバックをいただいています。初日のメディアデーもこれまででもっとも国際的で、ビジネスエリアやエンターテインメントエリアでも多くのよい反応が得られました。2日目から一般の方々も参加できるようになり、喜びに満ちた顔を見るのは素晴らしい経験です。gamescomはコミュニティに焦点を当てている点が特徴です。 ステファン: 私はこの1月に参加したばかりですが、この数日間、そしてこれからの数日間できるだけ多くの来場者と接する時間を取ろうと思っています。ティムが言っている通り、来場者の皆さんが多く集まっており、とてもいいムードで楽しんでいるのがわかります。待ち時間を要する場所も多いですが、皆さんそれを楽しんでいますし、悪いムードになることもありません。とても満足しています。私にとっても初めてのgamescomですが、出展者がブースをこれほどまでに詳細に作り上げているのを見て本当に感銘を受けました。 ティム: 出展者に関してもうひとつ付け加えますが、今年は1400以上の出展者が64カ国から集まりました。これは新記録であり、これまで以上に国際的なイベントになっています。来場者からのフィードバックも非常に良好です。 ――gamescom 2023は、出展者の外国人割合が76%で、26ヵ国からの33のグループが出展していたとのことですが、今年はさらに国際的になったのですね?: ティム: はい。gamescomはこれまで以上に国際的なイベントとなっています。再び70%以上の出展者が海外からの参加ですが、より重要なのは、今年は36ヵ国から47の国別パビリオンが設けられたことです。昨年と比べて40%の増加です。 ――今年のgamescomが、昨年に比べてさらに国際的になった理由は何でしょうか? ティム: gamescomが過去16年間非常に成功してきた理由は、ユニークなコンセプトにあります。最初からコミュニティやゲームファンに焦点を当てつつ、開発者、パブリッシャー、流通関係者といったゲーム業界全体のエコシステムにアプローチしてきたからです。私たちはゲームのエコシステム全体に対応し、それぞれのコミュニティに合わせた出展形態を提供しています。これがgamescomの強みです。 ステファン: また、gamescomの提供するもの自体が素晴らしいのはもちろんですが、devcomのようなイベントでは開発者やビジネス関係者が集まり、さらにトレードイベントとの連携が可能であることが強みです。トレードビジターはエンターテインメントエリアでコミュニティが何をしているかを確認する機会があるので、この相互作用が非常に強力です。新型コロナウイルスの以降、デジタル時代に非常に早く適応したこともあり、gamescomは物理的な体験とデジタル体験を組み合わせた非常にユニークな存在となっています。 ――今年のgamescomでとくに注力した点は何ですか?: ティム: gamescomにはつねに新しい要素があります。新しい要素がうまく機能しているのを見るのは興味深いものです。たとえば、gamescomでは新たにソーシャルステージが導入され、ポッドキャストからアニメ、音楽、ピアノ演奏までさまざまなプログラムが展開されています。また、カードゲームやボードゲームに特化した新エリアも設けられ、有名な出展者が初めて参加しています。 ステファン: ティムが最初に言った通り、私たちはコミュニティを大切にしています。これらの新しいフォーマットもその結果であり、私たちはコミュニティを観察し、興味の変化に対応しています。10年前、クリエイターに関心を持つ人はあまりいませんでしたが、いまではクリエイターがgamescomの重要な部分を担っています。 アーティスト、カードゲーム、ボードゲームエリアが今後どのように発展するか、つぎのgamescomでも注目していきたいと思います。これがgamescomの強みのひとつであり、つねに改善し、新しいフォーマットに適応し続けることで、コミュニティイベントとしてのgamescomを発展させていくのです。 ――コミュニティに焦点を当てているということで、とくにコミュニティに関して取り組んだことはありますか? 何か変更した点などがあれば教えてください。 ティム: たとえば、ソーシャルステージやサインエリアなどの新しいコンセプトがあります。クリエイターやインフルエンサーは、これまでにもgamescomにおいてコミュニティの重要な一部を担ってきました。私たちはつねにファンとクリエイターを最良の形で結びつけることを目指しています。 ――gamescomが開幕して2日が経ちましたが、会場内でゲーム業界やコミュニティのトレンドを感じますか? ティム: 私の視点から見ると、新しいトレンドというよりも、既存のトレンドが進化し続けている印象があります。そのひとつが、人々が相互につながり合うネットワーキングの増加です。現在のツールは、ネットワーキングをますます容易にしています。 ケルンには約30万から35万人のファン、流通関係者、開発者が集まっており、非常に多様な文化が融合しています。彼らはgamescomだけでなく、ケルンの街でもさまざまな場所で交流を深めています。これがgamescomの環境における大きな強みだと思います。 ――コロナ禍による中止から3年目となるgamescomですが、コロナの影響は完全に克服されたと考えていますか?: ティム: gamescomは完全には中止されませんでした。それが我々の強みのひとつでもありました。2019年にはパンデミック前の最後の物理的なgamescomが開催され、その後2020年と2021年には完全にデジタル形式で開催しました。その期間中もgamescom Opening Night Liveやgamescom Awesome Indies、gamescom Studioなどのデジタルフォーマットを展開してきました。そして、これらのデジタルプラットフォームは非常に高い評価を得ました。 現在のgamescomはハイブリッド形式となり、ショーフロアでの出来事に加えて、世界中のゲストや出展者にとってさらに強力なものとなっています。ですから、gamescomがパンデミック後の3年目を迎え、さらに強力になった理由のひとつは、ハイブリッド形式で開催されていることだと思います。 ――コロナ禍前の2019年は過去最高の入場者だったかと思いますが、ハイブリッド形式となった現在では、gamescomの体験自体を楽しんでいる人の数はさらに増えていると? ティム: そうですね。物理的な参加者数だけではなく、gamescomを楽しんでいる人の総数は2019年よりも多くなっています。なぜなら、私たちはいま、世界中にリーチしており、自宅からgamescomを視聴している何百万人もの人々がいるからです。会場に集まった人々の数は2023年は32万人でした。会場内外を合わせるとパンデミック前よりもはるかに多くの人々が参加しています(※)。 ※gamescom 2024の来場者は、2023年から15000人増となる約33万5000人だったことが発表されている。 ステファン: そして、gamescomに実際に参加するユーザーとデジタルで体験する人々のあいだには大きな違いがあります。ここに来た参加者は、すべてのフロアを歩き回り、壮大なブースの前に立ち、ゲームを直接プレイしたり、ほかの人がプレイしている様子を見たりと、すべてを体験します。それはgamescomをデジタルで選択的に楽しむのとはまったく異なる体験です。 デジタルで参加する場合、一日中コンピュータの前に座ってストリームを見るのではなく、見たいものを選びます。ストリーマーやクリエイター、私たちのコンテンツ、またはサードパーティーのコンテンツなどです。このようにして、これらのコミュニティはgamescomを楽しむ機会を得るのです。そして、これらは何百万人もの人々が楽しんでおり、gamescomの開催期間中だけでなく、その後も引き続き楽しむことができます。 したがって、gamescomのリーチは時間的にも広がっており、ゲームに興味のあるユーザーを楽しませることが非常に重要だと考えています。 ――2022年や2023年には多くの新しい出展者が参加しましたが、今年はいかがですか? ティム: 今年は1400以上の出展者が参加しています。その中には開発者もパブリッシャーも含まれています。これはgamescomの新記録です。具体的なブランドや名前で言えば、2Kが再び参加しており、エレクトロニック・アーツやカプコンも独自のブースを持っています。また、クラフトンやスクウェア・エニックスなどもあります。これらは昨年は独自のブースを持っていなかった企業です。ですので、質の面では昨年よりも格段によくなっています。さらに、初めて参加する企業としては、ポケモンカンパニーが挙げられます。昨年と比べても大きな進歩が見られます。 ――とくにgamescomへの参加に関心を持っている国や地域はありますか?: ティム: もちろんです。アジアの企業が以前よりも多く参加しています。とくに韓国の企業が目立ちます。中国の企業も同様です。 ――それは欧州のゲームファンにアピールしたいという考えからでしょうか? ティム: ヨーロッパだけでなく、ゲームファンに対してだけというわけでもありません。gamescomは、西洋市場全体に参入するチャンスでもあります。ゲームファンへのアプローチだけでなく、業界全体に向けて、ライセンス契約を結ぶためにも、この市場に参入し、成長するための機会が得られるのです。 ――E3がなくなって2年経ちますが、gamescomに対する注目度はさらに高まっていると言えそうですね。 ティム: gamescomで見られるこの成長は、E3がなくなったことによるものかどうかは判断が難しいですが、もちろんE3の喪失は業界に影響を与えています。そしてgamescomでは、このような大規模な成長が見られ、とくにアジアの企業がgamescomを活用して西洋市場に参入しようとしています。 gamescomの成功は、数十億人がゲームをプレイしているという、この巨大なゲーミングコミュニティの可視化だと思います。gamescomは、すべてを体験できる最後の大規模な場所のひとつです。 ステファン: 人々はゲームに非常に興味を持っています。gamescomの周辺でも多くの専門イベントが開催されています。これも、gamescomだけでなく、年間を通じて人々がゲームを楽しんでいることを反映しています。トレンドの話をすると、たといえばgamescom Latamやgamescom Asiaといったフォーマットで、gamescomの名のもとに年間を通じて追加のゲーム体験を提供しようとしています。 ――gamescomの将来についてどのように考えていますか? ティム: 私たちはつねに業界の動向やコミュニティのニーズに合わせて、gamescomを進化させ続けています。ですから、ゲーム業界全体のエコシステムにとって最適なステージやフォーマットを提供し続けることを目指しています。それには、以前よりもよいものを提供するために何ができるのか、つぎに何をすべきかをつねに見極める必要があります。しかし、5年後にどのようになっているかを予測するのは非常に難しいことです。業界が5年後にどこに向かっているのか、誰にもわからないからです。そのため、これに関しては予測するのが難しいですね。 ――日本のゲームファンも、gamescomに興味を持っている人が多いと思います。最後に、そんな読者に向けてメッセージをお願いします。 ティム: gamescomは非常にユニークで感情的な体験ができる場所であり、ほかにはないゲームの祝祭です。ですから、ケルンでのライブ参加は間違いなく価値があります。ただ、日本からは少し遠いと感じる方も、デジタルフォーマットを通じて参加することが可能です。たとえば、gamescom Opning Night Liveやgamescom Awesome Indies、gamescom Studioなど、ライブストリームを通じて参加できます。どこにいてもgamescomに参加することができ、日本の皆さんにも多くのコンテンツをご用意しています。 ステファン: このインタビューがきっかけとなり、より多くのクリエイターがgamescomについて発信する機会を得るかもしれません。というのも、ほとんどの日本の方々がデジタルでしか楽しめないからです。だとしたら、西洋の視点から私たちが用意したものをそのまま受け取るのではなく、日本市場のクリエイターの視点を通じてgamescomを楽しむのが最良の方法だと思います。 私たちはつねに共同ストリーマーやクリエイターを探しています。彼らがここに来て、ストリームを行ったり、インタビューを行ったりすることで、日本のゲーミングコミュニティにgamescomのスピリットを伝えるための相互のつながりを深めることができると考えています。