細菌の胞子が「木星や土星の氷衛星に生存」している可能性、実験結果が示唆
枯草菌の胞子を用いた氷衛星の表面環境の再現実験
ペトリ皿の上で増殖した細菌コロニーの数を数えることで、再活性化されて正常に活動するようになった可能性のある胞子の数を測定すると、ファヨールは説明する。 ファヨールによると、測定の結果、胞子の生存率は、室温よりも極低温下で照射された方が高かった。つまり、休眠状態から覚醒して増殖可能な通常の細胞に戻る枯草菌の能力は、極低温下の方が高いわけだ。その理由は、紫外線照射で引き起こされる損傷の速度が低温によって実際に低下するからだと、ファヨールは説明している。 ■細菌胞子は氷衛星の表面でどれくらい生き続けることができるか? 細菌胞子ほどの耐久性を持つ微生物なら、低温で非常に長い間生存能力を維持できると思うと、ファヨールは述べている。地球上では、過酷な環境への耐性がそれほど高くない微生物でも、極低温で保存すれば何年も生存可能な状態を保つことができるという。 再活性化の可能性があるかもしれない細菌胞子が、氷衛星上に存在することがあり得るだろうか。 もし氷衛星の地下にある液体の中に微生物がいるならば、その微生物が表面に行き着く可能性はあるかもしれないと、ファヨールは述べている。氷衛星の表面は太陽放射や高エネルギーの荷電粒子にさらされていると、ファヨールは注意を促す。そのため、氷衛星の表面の最上部に生存能力のある微生物が存在する可能性は低いと、ファヨールは指摘している。 ■胞子にとって最適なのはどの氷衛星か? ファヨールによると、土星の衛星エンケラドスだという。 もし微生物がエンケラドスの地下海で発生し、表面に到達できたとすると、細菌胞子はエンケラドスの南極で、生き残りの最善の機会を得られるだろうと、ファヨールは指摘する。エンケラドスの南極は、冬が長く、放射線レベルが低い。さらには、水蒸気のプルーム(間欠泉)の噴出によってできる氷粒子が再堆積することで、微生物が損傷から守られる可能性があると、ファヨールは説明した。
Bruce Dorminey