「性は高度なプライバシーなのに、多くが誹謗中傷のように語っている」オリンピック女子ボクシング性別問題の論点...IOCとボクシング協会の対立も背景か
2つ目の問題は「IBA」と「IOC」の対立
もう1つの問題は、「組織の対立が背景にある」という点です。IBA(国際ボクシング協会)はテストステロンの値が高いから出場できないと言及し、IOC(国際オリンピック委員会)は女性のパスポートを保有し、数年間女性ボクシング選手として競争してきた選手で疑う余地がないと出場を認めています。 正反対の判断になった背景として、この2つの組織は対立しています。去年IBAはIOCから、統括競技団体資格をはく奪されています。ロシアとの関係が強すぎるという理由です。 オリンピックはIOC(国際オリンピック委員会)が全競技を運営しているわけではなく各競技ごとに連盟がそれぞれで運営やルール決めを行っています。ボクシングも以前はIBA(国際ボクシング協会)に任せていました。 今回のIBA(国際ボクシング協会)の発言の理由はわかりませんが、こういう背景があることは理解しておく必要があります。來田享子教授は、「その大会を運営している組織を信じるしかない」と言っています。
男女の判別、歴史をさかのぼると…。 かつては、男性か女性かという議論が出たとき、女性を裸で歩かせて見た目で判断したようです。あまりに差別的・屈辱的ということですぐに批判が出てなくなりました。医学的にということで1968年から染色体検査。1992年からDNA検査。2000年からは疑いがあれば検査を行ってきました。 その後、2011年に陸上女子南アフリカのキャスター・セメンヤ選手の話が出ました。「強すぎる、男性じゃないか」という批判が出て、2011年に世界陸連がDSD規定を設けます。 そこでセメンヤ選手は、値を下げる薬を飲んで基準以下にして出場しました。基準以下にして2012年と2016年に女子800mで2連覇を果たします。そうすると世界陸連がDSD規定をさらに厳しく改定しました。これはひどいとセメンヤ選手は世界陸連を提訴しました。去年結果が出て、ヨーロッパの人権裁判所がセメンヤ選手の主張を認めました。
女性or男性 区別は難しい
男性と女性を分けるのは難しいです。來田享子教授からも①自己申告で男女に分ける案 ②テストステロン値などの基準で分ける案 ③体重や筋力など複数の基準で細かく分ける案がありますが、どれも難しいという指摘があります。 最終的には、競技の公平性といっぽうで人権。公平性の裏には安全性もあります。このバランスをどう取るかというのは、今も話し合いが続いています。 (2024年8月7日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)