「性は高度なプライバシーなのに、多くが誹謗中傷のように語っている」オリンピック女子ボクシング性別問題の論点...IOCとボクシング協会の対立も背景か
伊メロー二首相や米トランプ前大統領も言及し…混乱と誤解
2回戦で棄権したイタリアのメロー二首相は、『男性の遺伝的特徴を持つ選手は女子競技には参加すべきではないと思う』と言及。アメリカのトランプ前大統領は過激に『女性スポーツから男性を締め出す』『男性が女性を殴るようなものだ』とSNSに投稿しました。 これを受けて、心は女性で体が男性「トランスジェンダー」の選手なのではないか、といった憶測や誤解が世界中で起きてしまいました。 またIBA(国際ボクシング協会)は、ハリフ選手の遺伝子レベルの検査結果として、「XY染色体」を持っていると公表しました。多くの女性は「XX染色体」、多くの男性は「XY染色体」を保有していますので、多くの男性が持つ染色体をハリフ選手が保有しているため、このことも含めてトランスジェンダーではないかと言われました。
「DSD」ではないか…といった憶測も
ただもう1つ、「DSD」ではないかという憶測も出ているようです。西別府病院スポーツ医学センターの松田貴雄医師によると、DSDとは、『典型的な性分化が行われない疾患』とされています。 典型的な性分化とは何か、卵子のときにはX染色体しか保有しておらず、途中でXY染色体が出て分化し、男性・女性の身体的特徴が変わっていくんですが、この変化が、人によっては典型と違う変化をする人がいて、2000人に1人あるいは4500人に1人とも言われたりするそうです。決して少なくはありません。
今回の問題点 1つ目は「憶測で他人の性を議論、決めつけること」
スポーツとジェンダーに詳しい中京大学スポーツ科学部の來田享子教授は、今回の問題を2つ指摘しています。1つ目は、「憶測で他人の性の話を議論すること」これ自体がプライバシーの侵害ではないか、まして決めつけで「トランスジェンダー、DSD」と決め付けて話すことを、もっと繊細にならなくてはいけないと問題視しています。 ハリフ選手の父親は、「昔から女の子として育ててきた、トランスジェンダーでもない。法律的な証書でも女性と認定されています」と証言しています。それ以上のことを第三者が深く追及すべきではないし、それを知るために何か検査があるということ自体、人権侵害ではないかと指摘しています。 DSDについては、ハリフ選手本人は何も言及していませんし、家族も発言していません。來田享子教授は、「それを追求することはしてはいけない。個人の性などプライバシーの繊細な部分は触れないことが世界のスタンダードになってきています」と話しています。