自閉症のオーウェンはどうやって言葉を取り戻し、映画に主演できたのか?
オーウェンのディズニー・クラブの映像にあのディズニーが感涙
──ディズニーへの交渉で難しかったことは? ディズニー・アニメーションの映像を使うことは、最初から考えていたことで、これなくしてはこの映画は成立しなかったかもしれません。今でもオーウェンは彼が置かれている状況や気持ちを理解するために、一日中ディズニー・アニメーションのクリップを観ているくらいなのですから。 ディズニーはほかの方が自分たちのフッテージを使うことを全く許してくれない映画会社として有名です。僕はディズニーに彼のホームムービーや、自分が撮影した映像をお見せして、1年がかりでやっと許可を得ることができました。オーウェンが主催するディズニー・クラブの映像をお見せしたとき、自分たちの作品が、これほどまでに人の人生を変える力があると知り、感動して涙してくださいました。
自閉症について、じつはよく知らなかった
──オーウェンに出会うまで、自閉症についての理解はありましたか? じつは自閉症の方も自閉症についてもあまりよく知らず、彼といるときに、ぎこちなさを感じているような、そんな始まりでした。だけど僕も人間として成長し、自閉症あるいはスペクトラムにある方をより理解できるようになれたと思います。 才のあるの能力を持った方、健常者とまた違った能力を持っていらっしゃる方、ニューロダイバース、脳の働きに多様性を持った方に対する理解が深められたことなど、自分が経験したことを観客の方にもしてほしいと思い、この映画を作りました。 最初は「ブツブツ独り言なのかな」と思い、皆さんはどうしていいかわからない、理解できないと思われることでしょう。それが映画が終わるころには、彼の頭の中の世界に皆さんも入り込んで、完全に理解できるようになると思うんです。自閉症ではない人にはそういう気分で映画館をあとにしてほしいと思います。自閉症の方に観ていただいたときには、「自分の姿を真にスクリーンに描いてくれたのは初めてです」と皆さんが言ってくださいました。