エアレース侍パイロットの室屋がメンタルを制御してV2達成!
昨年のシーズン終了後に、脳科学者の中野信子さんとテレビ番組で対談した。昨年の千葉で初優勝した際に感じたゾーンのような体験、感覚の再現が室屋にとってテーマだった。メンタルトレーニングについては以前から福島大学の白石豊教授の指導を受けていて、1000分の1秒で争うエアレースに勝つために必要な集中力を研ぎ澄まし、コントロールすることを追い求めてきた。 「人の脳の50パーセントは違うことを考えている。集中力を高めるには、もう少し正確に自分を知ることが大事。自分の体や心の状態を客観的に見て、今、どれほど、他のものにとらわれているかを知ることが大事なんです。なんとなくそれを知るアイデアがあるんです」 そう室屋は語っていたが、V2のレースに究極のメンタルコントロールの秘訣をつかんだのか。 3年目を迎える千葉大会前に「1年目はエアレースがあることを知ってもらい、2年目は詳しくレースを楽しんでもらい、3年目は、さらにドラマを感じてもらえればいい」と室屋はコメントしたが、ファイナル4に残ったパイロットの戦いは、まさに壮大な心理ドラマを見ているようでもあった。 観客は2日間で約9万人。エアレースの高まる認知度を示すように、2日前に行われたパイロットのサイン会には、約1000人ものファンが集まった。 レッドブル・エアレースは、世界で8大会を転戦、年間の総合チャンピオンシップを争う大会である。4月のサンディエゴ大会に続く、2度目の優勝で室屋のポイントは「30」(優勝は15)となり、ソンカと並びトップに立った。規定では、同ポイントの場合、優勝回数の多い選手が上に行くため、5大会を残して、現在、室屋が1位である。室屋の目標は、年間チャンピオンだ。 その自信を聞かれて、「まだ5レースが残っている。全部勝てるとは思わないが、ファイナル4に残れば、自然と(ポイントが)溜まっていく。それなりの力は蓄えた。だが、もっと精度を上げて、安定させていくことが必要だと思っている。勝てるか勝てないかわからないが、勝てるまで(この競技を)続けていこうと考えている。毎年の積み重ね。(総合優勝に)届くまで続けるだけ」と謙虚に答えた。 一方、ライバルのソンカも、同じ質問に「シーズンは始まったばかり。だが、機体も調子も安定している。ポイントを上げていくパイロットもいるだろう。このままのポジションを保てるように頑張りたい」と言う。 次の第4戦は、7月22、23日に初開催となるロシアのカザン大会。室屋が勝てば3連勝となるが、この先最終戦のインディアナポリス大会まで真価を問われる戦いが続くことになる。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)