エアレース侍パイロットの室屋がメンタルを制御してV2達成!
「ファイナル4」での戦略に迷いはなかった。 「少しペースを落とそうと。難しいコンディションで対応するのはかなり困難。ファイナルではスーパーラップを狙わずにノーぺナで確実に飛ぶラインを選んだ。落ち着いて飛べていた。それが最終的な勝利につながったと思う」 1番目にフライトした室屋は我慢のレースを貫く。 迫る地元のプレッシャー。攻めたい気持ちを制御して、慎重にノーミスでフィニッシュするレースを選んだ。それでも、この日の自己ベストとなる55秒288の好タイムを叩き出して、後から飛ぶ3人にプレッシャーをかけた。これが彼が繰り返して口にする「ファイナル4に残る手ごたえのあるチームのポテンシャル」なのだろう。続くコプシュタインは、55秒846で表彰台を確保。3番目は、昨年度の総合チャンピオンのマティアス・ドルダラー(47、ドイツ)。ドルダラーは、室屋を上回るペースでフライトしたが、マクハリターンと呼ばれるハイGターンの入り口となる第11ゲートで、まさかのパイロンヒット。右翼が障害物にひっかかった。 ドルダラーは3秒のペナルティを課せられ脱落した。 この時点で2位以上となった室屋は、現在のランキングトップのマルティン・ソンカ(39、チェコ)の最終フライトを待つことになったが、そのソンカも、また風速7メートル以上の幕張の風に悩まされていた。 「トラックの真横から吹く風への対処が大変だった」 第4ゲートの通過時点で機体が傾いた。インコレクティブレベルのペナルティ。2秒のペナルティがプラスされたソンカのタイムは56秒533。この瞬間、室谷のV2が決まった。 2017年のコースレイアウトは、マクハリターンと呼ばれる折り返し地点のオーバーGの反則を犯すリスクのあるバーティカルターン(垂直宙返りターン)が2つあるだけでなく、もうひとつの折り返し地点にも、ハイGターンがあり、しかも、今回は、その入り口のゲートのセッティングが難しくしてあった。 そういう「テクニックの必要なコース」(コプシュタイン)に加えて、強い横殴りの風。悪コンディションになればなるほど、パイロットの決断とチームの戦略がモノを言う。 室屋は「2本はラッキーなところがあって自分だけのもの(勝利)じゃないと感じた」と言うが、風を計算に入れ、あえて攻めたい気持ちを抑え我慢のレースを貫いたメンタルコントロールの勝利だった。 敗れた3人は、心理戦で室屋の手のひらで踊らされていたのかもしれない。