エアレース侍パイロットの室屋がメンタルを制御してV2達成!
最高時速が370キロになる3次元モータースポーツのレッドブル・エアレース、千葉大会の決勝が4日、千葉市の幕張海浜公園の全長約4キロの特別コースで行われ、日本人パイロットとしてただ一人シリーズにフル参戦している室屋義秀(44、Falken)が昨年の千葉大会に続きV2を果たした。室屋は、これで3度目の優勝。エアレースは今大会で77回目を数えるが、プレッシャーのかかる母国で連覇したパイロットは、過去に2014年、2015年とイングランド大会で連覇したポール・ボノム一人だけだった。 涙はなかった。緻密な戦略とチームワーク。昨年の千葉の地で優勝して以来、積み上げてきた努力の証である。シャンパンファイトを味わった室屋は、チームスタッフや家族、大会運営にかかわった関係への感謝の意を伝えると、「苦しくミスもあった。際どい戦いだった。今日の勝利は自分の力だけでじゃないな、ということを凄く感じる」と、決勝レースを振り返った。 レッドブル・エアレースは、10か国、14人のパイロットで争われるタイムレース。決勝は前日の予選のタイムに沿って組み合わせが決まり、1対1の勝ち抜き方式で1回戦、準決勝と行われ、最後は「ファイナル4」で4人のパイロットが優勝をタイムで競うものだ。 1回戦の「ラウンド・オブ・14」は、わずか1000分の7秒差で逃げ切った。予選4位の室屋は、11位のペトル・コプシュタイン(39、チェコ)と対戦したが、その差は0.007秒差。距離にすれば、ほんの70センチの差で勝った。「ラッキーな面があった。僅差も僅差だった」。冷や汗もので進出した準決勝の「ラウンド・オブ・8」では、5位のタイムだった室屋は、4位のタイムのマット・ホール(45、豪州)との対戦となり、先にフライトした侍パイロットは果敢に攻めた。 しかし難関とされていた第7ゲートで強風に邪魔をされ、13m幅で置かれた2つのパイロンの間を通過する際に、機体を水平にする作業に遅れ、インコレクティブレベル(ゲートを水平に通過しない)のペナルティを取られた。2秒のペナルティを課せられて、56秒964とタイムを落としてフィニッシュした。 「あそこまで攻めるとぎりぎりで、ペナルティも切る。しかも、ラウンド8の途中から風が強くなっていた。10ノットから15.18ノットにまでなっていた。そうなるとコース取りも難しくなる。その風の分(機体を水平に戻すことが)遅れた」 ただ、その嫌な強風は神風になった。昨年総合ランキング2位の強豪のホールも、第11ゲートで同じくインコレクティブレベルのペナルティを犯したため、こちらも2秒プラスで57秒295のタイムとなり、室屋は幸運な形で「ファイナル4」への進出を決めたのだ。