経営で成功したいなら「努力はするな」...日本人が大好きな「苦労話」「スポ根」に隠された「罠」
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第25回 『不死鳥のごとく復活...起業家精神をもつ人が、決して人生で「失敗しない」納得の論理』より続く
「がんばったら?」が覆い隠しているもの
松下幸之助、本田宗一郎は、日本では伝説的な経営者となっています。彼らは多くの人から高く評価され、尊敬され、その言動はさまざまな学びを与えています。 ところで、なぜそこまでこの二人は日本人に人気が高いのか。あるいは、スティーブ・ジョブズの「ガレージから創業した」「IBMに門前払いを食らった」というエピソードがなぜ語られるのか。 そこにあるキーワードは「苦労」です。 始めたビジネスがうまくいかないとき、多くのアントレプレナーは助言を求めます。そこで多くの日本人の先達はこう答えるのではないでしょうか。 「もっとがんばったら?」 これは、もっと苦労しなさいという言葉に言い換えることができます。 私は、あまり「がんばれ」とは言いません。むしろ「あまりがんばりすぎるな」(work smarter not harder)とアドバイスします。うまくいっていない理由は何か、それを明らかにして、その解決に集中しろと。 「がんばれ」という言葉は素晴らしい言葉です。しかし、その言葉で思考停止に陥ってはだめです。がむしゃらにがんばる、やみくもにがんばる。これでは、どんなビジネスもうまくいかない可能性が高まります。 松下幸之助が薄暗い町工場で苦労していたのは事実です。しかし、彼の成功は「苦労したから」ではありません。スティーブ・ジョブズだって、ガレージで起業したから成功したのではありません。