経営で成功したいなら「努力はするな」...日本人が大好きな「苦労話」「スポ根」に隠された「罠」
苦労を苦労と思うな
起業時に苦労はつきものです。多くの起業家と話をしてきましたが、結構な頻度で彼らから「毎日がジェットコースターのようだ」という言葉を聞きます。事業そのものもそうでしょうし、人生もそうでしょう。 ただ、それが苦労と受けとられると問題があります。「ただの苦労」が毎日続いたら、誰だって耐えられないのです。ジェットコースターというのもポイントで、大変だけれど「楽しい」のです。毎日「今日も宙返り級の変事ばかりだったな、でも明日もジェットコースターに乗りたいな」と思って床につき、朝目覚めたら「今日は何が起こるかな」とワクワクする。 どんな起業家も、創業時にはたくさんの苦労に直面しています。でも「苦労を苦労と思わなかった」、これが真実ではないでしょうか。 日本人はというと語弊がありますが、多くの人は「苦労話」が好きです。「苦労は買ってでもしろ」という言葉もあります。苦労してそれを乗り越えて、成功する。また災難がやってきて苦労してそれを乗り越える。歯を食いしばってがんばる。物語として面白い。 映画やドラマでも同じです。 ロッキー・バルボアは陽の目を見ない、ロートルに片足を突っ込んだ、貧乏なボクサーです。彼は苦労して、チャンピオンに挑戦する。 苦労人がエリートを叩きのめす。たしかに爽快感があります。いわゆる「スポ根」といわれるジャンルの映画、漫画、ドラマは多くがこの構造をしています。 無名の選手が有名エリート選手に挑んでいく。そのために、特訓という名の苦労をする。その姿に多くの人は感動する。
「苦労したから成功したわけではない」
起業家の中には「苦労を苦労と思っていない」人が圧倒的な割合を占めます。 「仲間集めは大変じゃなかった?」「他の会社から横やりが入って大変だったよね」「投資家にボロクソに言われて落ち込んだでしょう?」、そう聞いてもケロッとしているのです。 「だって、いい人は自然と集まりますから」 「横やりが入ったところでやることは変わらないので」 「ボロクソに言われても、他に理解してくれる投資家と話せばいいので」 言葉にすると頼もしい限り、という話ですが、きっとそこでは苦労しているのです。しかし、当人はそれを苦労だと思っていない。もちろん苦労しなければならないとも思っていない。 成功した起業家は、苦労を苦労と思わず、むしろ楽しんでいます。まるで、ゲームで目の前のミッションを一つ一つクリアしていくように。ゲーム感覚というと誤解を招くかもしれませんが、本気で楽しく取り組んでいるのです。
山川 恭弘