「就活セクハラ」ついに法改正へ、“セクハラのブルーオーシャン”にメス
厚労相の諮問機関である労働政策審議会は、企業に対し、就活生へのセクハラを防止するよう義務づける建議をとりまとめた。 【全画像をみる】「就活セクハラ」ついに法改正へ、“セクハラのブルーオーシャン”にメス Business Insider JapanではOB・OG訪問やインターンシップなどをきっかけに、女子学生らがセクハラや性暴力被害にあう「就活セクハラ」の実態について、2019年2月から報じてきた。 就活生は雇用関係にないことを理由に労働法の保護対象からはずされており、ある人材会社関係者は「悪い意味でセクハラの“ブルーオーシャン”になっている」と話したほどだ。 就活先企業の社員と就活生という力関係から、被害を誰にも打ち明けられず、希望する企業への就職を諦める女子学生は多く、就活自体ができなくなり、非正規の職を転々とした女性もいた。 今回の法改正に向けた方針は大きな前進だが、就活生へのパワハラについては企業の防止義務の対象からはずれるなど、課題も残る。
企業に就活生のセクハラ防止義務
職場のセクシュアルハラスメントについては、事業主が労働者を守るために取るべき対応として(1)ハラスメントを行なってはならないという方針の明確化と周知啓発(2)相談体制の整備(3)事案が発生した場合の迅速かつ適切な対応などが、男女雇用機会均等法で義務づけられている。 しかし「就活生は雇用関係にない」ことなどを理由に保護対象からはずれている。2019年に改正、2020年に施行された改正法でも、事業主は就活生へのハラスメントを行なってはならないと周知したり、就活生から相談があった場合には適切な対応を行うよう努めたりすることなどが「望ましい」として、指針に記されるにとどまっていた。 今回の法改正の方針は、就活生をはじめとする求職者へのセクハラ防止を「職場における雇用管理の延長」として捉え、事業主に措置義務として課すものだ。 具体的には、OB・OG訪問など面談する際のルールをあらかじめ定めておくことや、相談窓口の周知、事案が発生した場合に被害者の心情に十分に配慮しつつ、行為者の謝罪や相談対応を行うことなどを想定する。 労働法や職場のハラスメントに詳しい、労働政策研究・研修機構(JILPT)副主任研究員の内藤忍さんは言う。 「企業が就活生らのセクハラを防止しなければならないようになったという点は前進です。伊藤詩織さんのケース※も、いわば就活セクハラの事案でした。こうしたことが二度と起きないようにしなければなりません」(内藤さん) ※ジャーナリストの伊藤詩織さんが就職先の紹介を求めて元TBS記者の山口敬之氏と会食した後、酒に酔って意識がない状態で性被害を受けたと告発。2022年7月に山口氏に賠償を命じる判決が確定した。