北欧巨匠の素顔に触れる「ポール・ケアホルム展 in 京都」 禅とミニマリズムの融合は必見
親日家の妻の影響が息づくデザイン
トークショーでは、ケアホルムの息子のトーマスが登場。彼は、「父の家具をこのような環境で見られるのは素晴らしい。来日前に写真でも見たが、実物を見て興奮している」と語った。庭が見渡せる展示は、母親ハンナの家の配置を想起させるようだ。家具と家具の間に余白を持たせて、低い家具で空間に抜け感を作るのがポイントだという。ケアホルムの作品は主張する家具ではないので、家具自体を見るというよりは庭を見ながら楽しめる。
日本との関連性については、「父は来日したことがないが、母は5~6回来日したことがある」。ケアホルムの妻のハンナは建築家で、彼同様デンマーク王立アカデミーで教鞭を取っており、生徒を連れて研修目的で来日していたようだ。「母方の祖父母が親日家で、デンマーク訛りの日本語を話していた。祖父は、庭好きで日本庭園を作ったりしていたのを覚えている」。共働きでありながらも、「ロイヤル コペンハーゲン(ROYAL COPENHAGEN)」の食器にカトラリー、牛乳はジャグに入れてとテーブルセッティングは完璧だったそうだ。
ケアホルムは、妻や義祖父から影響を受けて親日家だったのかもしれない。ケアホルム作品の一番の魅力は彫刻的で浮遊感のあるデザインだと思っていた。低い座面に直線を多用したデザイン、シンプル極まりない造形と日本建築に合う要素は多い。しかし、ここまで和の空間に馴染む理由は、生活を共にした親日家の妻の影響だと実感するイベントだった。
この展覧会に合わせ、書籍「POUL KJAERHOLM 共鳴する日本の美意識」が登場。写真家の矢吹健巳による撮り下ろしの写真を始め、トーマスと娘のクリスティーヌ・ケアホルムの前書きが収録され、ケアホルム作品が日本の美意識との共鳴を掘り下げた一冊になっている。編集はブックディレクションを行うBACHの幅允孝、ブックデザインは須山悠里、監修・執筆はKIGENZEN手掛けた。価格は、4950円。