2024年から変更された贈与税…暦年課税制度と相続時精算課税制度は何が違うの?両制度を徹底比較!【相続専門税理士が解説】
贈与税の課税方法(2)…相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、贈与した時点の課税を、将来相続が発生するときまで先延ばしにする制度です。先延ばしにした分は、将来の相続税の計算に反映されます。 60歳以上の親から18歳以上の子どもまたは孫への贈与について、生前は累計2,500万円まで贈与税が課税されません。2,500万円を超えた部分については、前払いとして20%の贈与税が課税され、その贈与者が亡くなった場合には、その贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額を合算して、相続税として精算(納付した贈与税額については相続税額から控除)されることになります。 その贈与者が亡くなった場合には、その贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額を合算して、相続税として精算(納付した贈与税額については相続税額から控除)されることになります。 ◆非課税枠新設で節税効果あり 相続時精算課税制度は、相続が発生すると贈与財産が相続財産に加算されることになり、結果的に相続税が課されることになります。基本的に相続税の節税効果はありませんが、2024年に110万円の基礎控除、すなわち非課税枠が新たに設けられ、その分の節税効果があります。 毎年贈与を続けると、たくさんの非課税枠が使えて有利な制度になりました。この110万円は、将来の相続財産に加算されません。また、110万円以内の贈与であれば、申告する必要もありません。 上記の説明から、相続時精算課税制度の使い勝手がよさそうな印象を受けるかもしれませんが、注意点もあります。いったん相続時精算課税制度を選ぶと、その後に同じ人から暦年課税による贈与を受けることができなくなるのです。 ◆相続時精算課税制度のメリット 生前贈与の対象となる財産、たとえば非上場株式であれば、その株価を贈与時の評価額に固定することができますので、株価上昇時には税負担の増加をストップさせることが可能です。相続発生後には、贈与時点の評価額が加算されますので、贈与時から相続発生時までに評価額が上がったとしても相続税額に影響しません。これが相続時精算課税制度の最も大きなメリットといえるでしょう。 また、賃貸不動産のように家賃収入が入ってくるものについてもメリットがあります。すなわち、贈与を受けた子どもたちや孫世代に将来の収益力アップにつながる可能性があり、また家賃収入を受け取ることによって納税資金を準備することが可能となり、株式と同様の効果を得ることができます。 ◆注意点は2,500万円の控除額は課税繰り延べにすぎないこと 相続時精算課税制度の注意点は、相続時には贈与を受けた財産も相続財産に含めなければならないということです。ただし、先に支払った贈与税は、相続税から控除することができますので、税金を二重に支払うようなことはありません。つまり、相続時精算課税制度は課税の繰延べの制度であり、贈与に伴う2,500万円の控除額は税金の非課税枠ではなく、生前贈与を促進するための課税繰延べ枠にしかすぎないことを認識しておく必要があります。 なお、相続時精算課税制度の非課税枠は、贈与者1人当たり2,500万円までとなっていますので、父と母それぞれから2,500万円を相続時精算課税制度で贈与受けた場合、1人の子どもに対して合計5,000万円までこの制度が使えます。 岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
岸田 康雄