齊藤工さん「語るべき物語がたくさんある」児童養護施設の子どもたちの“声なき声”を描く映画を手掛けた理由
──映画化のお話をされた時に、施設側はどういう反応でしたか? その施設には地域と交流をしたいという思いがあるんです。 “かわいそうな子たちがいる、決して踏み込んじゃいけない場所”という周囲の目線を子どもたちも感じていますが、そうではなく、この施設は彼らの人生と地元の方たちが接点を持つことをすごく前向きに捉えていらっしゃいます。当然、気軽にカメラを向けられない対象であるのは分かったうえで、それでも彼らの葛藤や声なき声を描くことに意味があると思いました。 知ってほしいという感情を持っている子どもたちもいるし、施設の親代わりの大人たちにもそういう思いがあると僕が知ったことが始まりで、その先にあるのは彼ら、彼女らと一緒に映画を作ることなのではないかと思い至ってからは、ブレーキをかけるポイントはあまりなかったです。 冨永由紀(ライター)●幼少期を過ごした1970年代のフランスで映画の魅力にはまる。大学卒業後、パリへ留学中にヨーロッパの国際映画祭で日本の映画人の通訳を務め、帰国後に映画雑誌編集部を経てフリーランスのライターに。雑誌やウェブ媒体で映画紹介やコラム、国内外の俳優、監督インタビューを執筆。趣味は歌舞伎観賞、関心事は90代を迎えた両親との暮らしの充実。執筆協力「日本映画作品大事典」(三省堂)、「ハリウッドスターの英語」シリーズ(アルク)など。