“しゃべる”イルカが話題 人間と会話できる日は来る?
鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)で飼育されているシロイルカ「ナック」が、言葉を“しゃべる”ことで大きな話題となりました。「ピヨピヨ」や「おはよう」など、8種類の言葉を真似できるそうです。ゆくゆくは、人間との会話が実現する可能性もあるのでしょうか? イルカの生態や行動観察から、その可能性をみてみましょう。
イルカはクジラの一種
実は、「イルカ」という名称は、生物学や分類学上の正式名ではありません。イルカは水中に暮らす哺乳類で、「クジラ目」というグループに属します。このグループは2つに分類でき、その1つが口の中に歯を持つ「ハクジラ類」です。 ハクジラ類には体長が5~6メートルになるクジラもいますが、多くは4メートル以下の体長の小さなもの。このおおよそ4メートル以下の小型のハクジラ類を「イルカ」と呼んでいるのです。一方、大型のハクジラ類と、口の中に「ヒゲ板」と呼ばれる人間の爪と同じような物質でできた板状のものを持つ「ヒゲクジラ類」を、一般的に「クジラ」と称します。
イルカが賢いのはホント?
一般的に「賢い」イメージの強いイルカですが、その根拠の一つとされるのが巨大な脳です。動物の知能の高さを推し量る指標に、体重に対する脳の重さの割合「脳化指数」があります。この数値が一番高いのがヒト、その次がイルカとされています。さらに、イルカは脳の表面のシワの数がヒト並みにあり、神経細胞が多いことも表しています。 脳の特徴以外にも、海綿動物を「道具」として使った餌探しや、鏡に映った姿を自分の姿と認知した実験結果など、さまざまな知的行動が確認されています。また、水族館のショーなど、一度覚えたトレーナーのサインを忘れることがなく、優れた長期記憶を持つこともわかっています。
イルカの「声」はおでこから?
水族館などを訪れると、イルカの鳴き声を耳にする機会があります。ただし、「声」といってもイルカは口から声をだしているわけではありません。イルカには声帯がなく、額から音を出しているのです。 その秘密が、額の内側にある「メロン」と呼ばれる音を通しやすい脂肪のかたまり。イルカの頭の上には小さな呼吸孔(鼻)があり、鼻の穴から鼻道に、いくつかの袋がついています。この袋に空気を出し入れしてできた音を、メロンを通して発射。発した音が何かにぶつかってエコーとしてはねかえってくると、下あごの骨を通して耳に届いて音を聞き分けます。イルカはこの能力を「エコローション」と呼ばれる能力を使って、自分の現在地や餌の位置などを把握します。 イルカは主に3つの声を使い分けます。 ●ホイッスル音 「ピューピュー」と口笛を吹くような澄んだ声。仲間同士のコミュニケーションに使われ、一頭ごとに特徴がある。群れの中で、相手の声を聞き分けるとされる。 ●クリック音 「ギリギリッ」「カチカチ」など、小刻みにつながった声。モノの位置を知るための音で、エコローション時に使われる。 ●層状音 「ギャギャ」など、ネコが怒ったような低いうなり声。相手を威嚇したり、激しく争ったりする時に使われる。