オーガスタ、ベイヒル、リビエラ…「対コース」の道具選び/駐在レップの米ツアー東奔西走Vol.6
実際、松山プロは「これはマスターズに向けてやってください」と口に出すわけじゃない。ですから初めて彼に帯同した年は、そこに気づかないことが多かった。あるときマスターズの2カ月前ぐらいの試合で急に4番アイアンを頼まれたことがあって、「なんでこの試合で4番アイアン?」って思ったことがあるんです。しばらくして気づきましたが、その時点でマスターズまであと4試合しかなかった。オーガスタで使いたい4番アイアンを、試合で試しておきたかったんですね。 マスターズに対する彼の思い入れが次第に分かってくると、「あ、これはオーガスタに対して言っているんだろうな」と分かるケースが増えてくる。松山プロがマスターズに優勝する前は、それこそ終わった直後の5月から、すでに次の年のマスターズに向けたクラブをリクエストしていました。つまり彼は年間を通して常にジョージア州の外れにあるコースのことを考えているんですね。
もちろんオーガスタは「ドロー有利」が前提。ティショットでしっかりドローを打ちたいホールは多いので、そのあたりも考慮した上でのクラブ選びになります。スプーンもしっかり飛ぶだけじゃなくて、止めることもできるものが欲しい。さらに「止められる4番アイアン」も欲しい。アイアンも点で打たなければいけないので、「ロングゲームで止める要素」がかなり重要になってきます。 同時にグリーンからこぼれることを想定して、ウェッジはちゃんとスピンが利く状態にしておきたい。マスターズまでになるべくウェッジの溝をフレッシュにして、かつ手になじんだ状態で迎えさせたいんです。そう考えるとマスターズ前週のテキサスの試合「バレロテキサスオープン」で、新品のウェッジを投入できるといい流れになるんですよね。今年はそのバレロで“無事に”新しい溝にスイッチできました。 ◇ ◇ ◇ 気づけばもうオーガスタの季節がやってきました。松山プロにとってはこれで13回目の出場になります。何度も現地で見ていますが、オーガスタにいる松山プロの思考や身体、スイングなどは毎年異なります。今年は2月に2年ぶりの優勝を果たしましたし、その後もプレーヤーズ選手権でトップ10に入るなど非常にいい流れでオーガスタに乗り込むことができます。充実した一週間を過ごせるように、チーム松山のサポートメンバーとともに、“今の松山プロ”へ最善の準備をしていきたいと思います。(取材・構成/服部謙二郎)