オーガスタ、ベイヒル、リビエラ…「対コース」の道具選び/駐在レップの米ツアー東奔西走Vol.6
東海岸シリーズは「池」との戦い
フロリダシリーズが始まると、“池”が存在感を出してきます。「アーノルド・パーマー招待」のベイヒル、「コグニザントクラシック」(旧ホンダクラシック)のPGAナショナル、「ザ・プレーヤーズ選手権」のTPCソーグラスなど、池が絡む名物ホールも多く、どれも距離があってタフな歯応えのあるコースが続きます。プレッシャーのかかるショットも多く、ティショットも勇気を持って打たなければなりません。ですからクラブに関しては、ある程度この辺までには“落ち着いていてほしい”。どのコースも、信頼できるクラブでないとスコアを出させてはくれません。 フロリダシリーズまで来ると、ようやく暖かい気候でゴルフができます。3月でも基本的には半袖でプレーができ、しっかり振れるしクラブスピードも出せる。選手によっては、暖かいフロリダに行くまでクラブのテストをしたくないという人もいるほどですからね。
一方でフロリダはまた芝もガラッとかわり、バミューダ芝が存在感を出してきます。バミューダは西海岸の芝に比べたらちょっとスカスカではありますが、ボールが中に入ると飛ばない。松山プロはフロリダのゴルフ場でよく練習していることもあり、バミューダに慣れています。バミューダのラフから距離感を出すの、本当にうまいですよ。
マスターズが終わった瞬間に翌年マスターズの準備が始まる
そして4月の頭にマスターズがやってきます。まさに前半戦の山場といえますが、オーガスタGCは実はレップの仕事がとてもやりづらい。ツアーバンはコースの中に入れず、クラブハウス前のワシントン通りを挟んだ向かいの駐車場にバンを停め、そこでみなクラブを組み立てます。さらには組み立てたクラブをコースに持って入れない決まりもあり、コース内にクラブを持ちこむ場合は、オーガスタの関係者に頼むしかないんです。携帯電話も持ち込めないので、選手と連絡を取ることもままならず、選手がコースに出てしまうと、もうどこにいるのか探すのも難しい。
また打撃レンジも選手1人につき2人しかつけないので(だいたいキャディとコーチ)、練習場にも入りづらい。マスターズはツアーレップ泣かせの一週間です。とはいえ、オーガスタに来る前にクラブは決まっている選手がほとんど。松山プロもここまでにほぼクラブを決めて、オーガスタに乗り込みたいと考えています。 松山プロの普段のクラブ選びは「全てがマスターズのため」と言っても過言ではありません。特に年が明けてからはずーっとこの4月頭の大会が照準にあります。クラブだけでなく、ボール、シューズなどを含めて、試合で使うモノは少なくともマスターズの1カ月以上前には体になじませようとしています。全てのギアを万全にした状態で大一番に臨みたいと考えているわけです。