「みんなと仲良くしなくていい」...協調性に固執する日本人が見落としがちな“当たり前”のコミュニケーション技術
「心をひとつにすること」は重要じゃない
でも、「団結すること」が一番だと思っている大人は、まだまだ多い。 例えば、スポーツチームが団結するのは、「勝つため」だ。当たり前だけど、それが一番の目標だね。 でも、いつのまにか「団結すること」が、一番の目標になってしまうことが、この国ではとても多いんだ。 「勝つためにどうしたらいいか?」が重要なのではなく、「団結するためにどうしたらいいか?」が重要になってしまうんだ。 みんな同じことをしているか、みんな同じ方向を向いているか、みんな一緒に行動しているか。そんなことだけが一番重要なことになってしまうんだ。 サッカーでも野球でも、日本人チームが外国チームに勝つと、テレビのアナウンサーは、必ず「選手が心をひとつにして、勝利しました」と言うよね。 ぼくはそうじゃないと思う。サッカー選手は、世界で活躍している人が多い。みんな自分なりの練習の仕方やコンディションの整え方、理想とするサッカーがあるはずなんだ。プロだからね。 でも、そういうプロ選手が、「心をひとつ」にしたのではなく、「勝つために協働する方法」を見つけ出したんだ。中には、「俺のやり方とは違うんだよなあ」と思っていた人もいるだろう。でも、心の中では納得してなくても、協働するために動いたんだ。「心をひとつに」なんて分かりやすいことじゃないんだ。 『「それってあなたの感想ですよね」...令和の子どもたちがあこがれる「論破」がもたらす最悪な末路とは』へ続く
鴻上 尚史
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