「やさしすぎる上司」が有望な若手を退職に追い込む
「こうしていこう」という姿勢がネガティブをポジティブに変える
ネガティブフィードバックは、「フィードバック」という言葉からわかるように、過去に起こった事象(事実)についてのコミュニケーションです。しかし、見ている先は過去ではなく未来であり、将来の良い状態に向けてギャップを埋めていくことが目的になります。 ネガティブフィードバックは、過去への「ダメ出し」ではなく、未来へ向けて「変わっていく」ための支援が目的です。 ギャップがあるのは事実ですから、そこから目をそらさないという意味でネガティブなことも言いますが、あくまで未来を切り開くための現状把握と共通認識です。「将来に向けてこのギャップを埋めていこう」ということを、上司と部下でお互いに確認する作業です。 そして、部下の未来も、会社の未来も明るくなるために話し合います。上司の憂さを晴らすためでも、会社が都合よく部下を追い込むための手練手管でもありません。
まずはSNS感覚でほめる練習を
ネガティブフィードバックの効果を高めるのが、日常のポジティブなフィードバックです。ポジティブフィードバックとは、「ほめる」「認める」「注目する」「感謝する」などですが、わざわざ面談の時間をとる必要はありません。 仕事をしているときや仕事が終わったときに、「今回の企画書、よく整理されていてわかりやすいね」「昨日は急な対応ありがとう」「さっきのミーティングでのあの質問は良かったね」などと、上司から見て、いいなと思ったことに「良かったです」「感謝しています」と声をかけるだけでいいのです。イメージとしては、部下の言動について「イイね」ボタンを押すイメージです。 それだけで、自分の行動により承認欲求と帰属欲求が満たされた部下は、心が前向きになり、その行動をくり返したくなります。行動の強化だけでなく、上司に対する親近感や信頼感も増すことになります。 私は、フィードバックの割合は、ポジティブ4以上、ネガティブ1以下の割合を意識してください、とお伝えしています。4:1は、1回の面談のなかでの割合ではなく、日常のコミュニケーションも含めた全体での割合です。 ちなみに1回の面談で「1個指摘して他4個ほめる」というハイブリッドをすると、「結局、この面談で何が言いたかったのか?」「私はほめられたのか? 叱られたのか?」と論点がブレて効果が低くなります。また、わざわざ指摘する必要がない部下へ「4回ほめたから1回は指摘しないと」と義務的にやるものでもありません。 気になったときやミスしたときだけ指摘するのではなく、上司はもっと、「あなたのことを気にしていますよ」「あなたのことを応援していますよ」「あなたの行動は良かったですよ」というポジティブ(肯定的)なメッセージを部下に送り続けるコミュニケーションが重要です。
難波猛(マンパワーグループ株式会社シニアコンサルタント)