「やさしすぎる上司」が有望な若手を退職に追い込む
ネガティブフィードバックが今なぜ必要なのか?
なぜ、あえて耳が痛いフィードバックを行う必要があるのか。その価値は、大きく4つあると考えられます。 1つめは、「組織のため」です。 会社などの組織は、変化し続ける社会や顧客に対して価値を提供できる集団であり続けなければ、存続することはできません。そのためには、全社員に会社の期待を上回る行動や貢献、絶え間ない変化と成長が求められます。他の社員の頑張りや過去の財産で現状はカバーできていたとしても、期待を下回る状況を放置していると、やがて組織運営の障害になることがあります。 2つめは、「部下本人のため」です。 人は一般的に、周囲評価より自己評価の方が高い傾向があり、気づかなければ、変わることもできません。なかには、応えられていないことに薄々気づきながらも、上司に「それはダメですよ」と言われないことで「何も言ってこないから、これでいいんだ」と解釈して、同じことをくり返している人もいます。 ギャップが生じている場合はフィードバックをしてあげないと、部下の気づきの機会、そして成長の機会を奪うことになります。 3つめは、「周りのため」です。 厳しいことを伝える姿勢を上司が示さないままでいると、組織のモラルや士気を低下させることにつながり、若手社員がどんどんやる気を失って、最終的には会社を辞める原因にもなります。特に、将来有望な自律的な若手ほど「この会社にいても成長できない」「目指したい先輩がいない」と感じると退職を選択する可能性が高くなります。 4つめは、「上司自身のため」です。 「言いたいこと」「言ってあげたほうがよいこと」を言わずに我慢すると、上司自身のストレスになります。また、部下に厳しいことを伝えることは、「部下に求めていることを自分はできているか」「部下が素直に聴いてくれる関係性を構築できているか」など、上司自身の振り返りや成長にもつながります。 相手に厳しいフィードバックをするということは、我が身にブーメランがはね返ってくる可能性があるからです。勇気がいる行為ですが、その先に上司自身と部下の成長が待っています。